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プロ野球とAKB48。Jリーグと地下アイドル

球春到来!選抜高校野球は智辯学園高校が初優勝。プロ野球も開幕して、いよいよ春の訪れを実感するこの時期。オコエ瑠偉の活躍が話題になったかと思えば、山田哲人がまだまだ調子が上がらないという話題まで。様々なニュースが日本列島を駆け巡っていく。「あれ、Jリーグは?」。一面を飾るどころか、どこか片隅に追いやられているような感覚に陥ってしまう。びっくりするかもしれないが、これが世間一般の認識なのも事実。それでも一定数の根強いファンがいるJリーグを始めとするサッカー。その魅力と、野球の違いとは何か。 

 
未だ「マイノリティ」のJリーグ

 
 野球というスポーツは何よりも情報量がけた違いだ。助っ人外国人の話題から高校球児の話題まで、本当に、何から何まで色々ある。そして思うのだ。プロ野球とはさながら、AKB48のようではないかと。

「二刀流」の大谷翔平は誰もが一度は聞いたことがある人物ではないだろうか。その前はダルビッシュ有や斎藤佑樹だった。知らない人はまずいないだろう。翻ってAKBを見てみよう。前田敦子を知らない方はまずいないと思う。今でいうとセンターはまゆゆこと渡辺麻友だろうか。メガヒットを打ち出しながらも、ここまで超巨大化したアイドルグループというのもなかなか稀有でもあり、そして誰もが知っているというのも似通っている。

 じゃあ、Jリーグはどうだろう?

 Jリーグは、さながら地下アイドルと言ったところである。ある種Jリーグが打ち出しているコンセプトから地域に根差していることと、露出する選手がある一定の有名な選手や海外クラブに所属する選手に限られていることが根底にあるんじゃなかろうか。

 A代表に選出されてテレビに出るかどうかというレベルというリアル。宇佐美貴史や柴崎岳の名前をサッカー好きであれば皆知っている。しかし、サッカーが分からない人からしてみたら「誰だよ」となってしまう。制服向上委員会のメンバーを言える人がいるだろうか。そもそも「制服向上委員会って何ですか?」という人もいることだろう。つまりは、Jリーグは未だにマイノリティなのだ。クラブ数が多いから、ファンの数ではそれほど変わりはないように見えるだけなんじゃないかと思っている。

 サッカーを愛し、クラブを応援するサポーターの方からすると「何を言っているのだ」と感じてしまう人がいるかもしれない。実際、私も「サッカーは世界一の人気スポーツなのだから日本人も知っていて当たり前」という認識だった。本田圭佑や香川真司を知らない人はいないし、サッカー日本代表は誰もが認めるキラーコンテンツだ。

 しかし一歩引いてみる。そしてJリーグまでひっくるめたとき、はっとする。「え、ヴェルディってJ2なの?」とサッカーをまったく知らない母から出てきた言葉。もう読売ヴェルディではないこと、経営危機にあったこと、それすら知らないのだ。

 
「コア」を愛する一定数

 
 マイノリティであることは否めないが、なかなか興味深いことにいつの時代にも「王道」が好きな人もいれば、「コア」なものを愛する人は多くいる。どこか通好みで、その道を深く知っている印象すら与えるからだ。

「巨人・大鵬・卵焼き」という言葉ができた同時期に「大洋・柏戸・水割り」という言葉もできたほどだから、この習性は昔から一切変わらないようである。1960年代、大人気だった巨人軍や横綱・大鵬と比較して、同じく横綱だった柏戸や大洋ホエールズ(現在の横浜DeNAベイスターズ)はどちらかというと通な人が好む「コア」な部類だった。Jリーグも同じように、後者の人間が多く占めているんじゃないかなぁと思う。

 プロ野球のような派手さと華やかさという部分が見えづらいものの、選手とサポーターの距離が比較的近くにあるというのも魅力といえる。人間臭い部分が常に見え隠れするからこそ、はまる人はまた見に行こうとなるんじゃないだろうか。

 
根底にある単純な「違い」とは

 
 対立構造のように見えるこのプロ野球とJリーグ。しかし、元をたどればAKBは秋葉原出身の地下アイドルだった。秋葉原駅を降りてすぐのところにあるドン・キホーテ最上階から、必死に自分たちで活動をすることでのし上がってきた。プロ野球も2軍という「地下アイドル」から必死になって這い上がり、多くの観客と派手な応援歌が流れる球場にたどり着くことができるわけである。

 Jリーグもそういう部分では似ている。芽が出なければチームを去らなければならない。2軍が無いから、残るためには練習からアピールをしなければならない。やっとレギュラーを獲得したと思っても、上には上がいると思い知らされるリアル。その中から日本代表というスポットライトを手に入れられるのは、本当に限られた人間だけ。そう見てしまえば、そこまで相違ない。では、何が違うのか。

「メディアへの露出度」、これだけなんじゃないか。

 プロ野球はサッカーと比較して情報量が多い。例えば、阪神の外国人投手であるメッセンジャーがラーメン好きでこだわりが強いエピソードは、野球とは関係ないこと。だが、知ることでその選手への共感が得られる。

 それと比較してJリーグにはとにかく情報が少ない。ここを掘り下げていくと、選手一人ひとりに対してスポットライトが当たっていないように思える。もちろん、それ故にサポーターは選手のちょっとしたエピソードを知っただけでも喜びが生まれるし、親近感も沸く。テレビというディスプレイを通したものではなく、よりリアルで血が通っているような。

 それはプロ野球でも同じであるのに、なぜだろう。Jリーグはさらにそばへと寄り添っているように思える。それはJリーグが持つ唯一無二の魅力でもあり、プロ野球にはない類まれなる財産だ。同時に大きな問題点でもある。

 
「とっかかり易い」Jリーグにする方法

 
 どこへ行ってもサポーターや応援団が醸し出す「垣根の高さ」。当然、野球でもそういう垣根の高さはあるわけだが、どこかとっかかり易い。立地の良さもあるが、球場内の雰囲気はさながらどこかのお祭りのようでもある。それがサッカーになると、なぜ垣根が高くなるような印象を受けるのか。サッカーを興行として捉えるなら、敷居を高くしても良いわけではない。興行は満員になることが正義なのだから。サッカーが本質的に興行かどうかはさておいて、「満員のJリーグ」から、また違った日本サッカーの新しい景色が見えるはずだ。

 例えば東京ドームでは、安価でも楽しんでもらえるように外野の立見席がある。はっきりと言えば、見えづらい。それでも土日となると、多くのファンが球場に足を運ぶ。ドームにはテレビもあり、満足に見ることができなかったとしても、楽しめる要素が盛り込まれているからだ。

 さて、AKB48に目を移してみよう。かつてAKB総選挙が行われた際には「死角席」や「ここにいたこと席」といった、一切総選挙を見ることができない席が用意された。そんな席が売れたのか? という疑問も残る。これが売れたのである。つまり、チケット一つとっても工夫次第でファンを獲得する機会は存在する、ということだ。

 例えばだが、初心者解説席というのを設けてもいいかもしれない。かつてプレーしていたOB選手が初心者の為に解説を行うという席だ。実際に読売ジャイアンツはOB選手の解説を聞きながら試合観戦が出来る、「レジェンドシート」を設けているし、ソフトバンクホークスの「選手解説付き練習見学」などもある。あるいはイヤホンをつけて実況中継のようにしても面白そうである。現に歌舞伎ではイヤホンガイドを付けることで、敷居を下げる工夫も見せている。

読売巨人軍 レジェンズシート特設サイトより
読売巨人軍 レジェンズシート特設サイトより

 
 スポーツのテレビ中継が日常でなくなっている昨今、テレビに頼らずサッカーを盛り上げていく方法は考え続けなくてはいけない。そこには些細なところから見える「とっかかり易さ」を見出すことから、サッカーというコンテンツが大きくなっていくのではないだろうか。

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About kanero

kanero
黒髪のかねろ:好きなスポーツはサッカーに野球、バスケやボクシング。おまけに陸上。興味があるものは色々。鉄道研究部副部長で乗り鉄派。合唱団経歴20年でバス担当。復興支援の記事も書く。書けるものならなんだって書いてしまう習性を持つ。

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