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熱狂のムエタイタイトルマッチ!リングの裏側にある「秘密」と「口コミ力」

応援すること、されることの心地よさは、中々味わえるものではない。Jリーグでも熱心なサポーターや観客によって選手たちが支えられていて、素晴らしいスポーツだなといつも思う。でもこの魅力は十分に伝わっているのだろうか?いや、伝わっていない。サッカーというものはこんなにもいいスポーツなのに。
では何が足りないのだろうか?カギは「口コミ」にある。私はそう考える。
それは、あるムエタイのタイトルマッチがきっかけだった。満員の観客と圧倒的な熱気で包まれたリングの裏側には、「ある秘密」が隠されていたのだ。

 
場内満員の裏側にある真実

 
先日、私の知人であるムエタイ選手・矢島直弥さんがタイトルに挑戦した。縁があり、応援をしに行ったときのことだ。激励賞を送ってきた有名俳優はさることながら、矢島選手の応援団はおそらく国内で最も熱狂的で、チケットは完売。多くの人数が集まった。試合は回を追うごとにヒートアップし、激しい打ち合いの末、最終ラウンドでTKO!タイトルを獲得するに至った。喜びに沸き、感動で涙を流すひともいたほどで、場内の熱気がひとつになる素晴らしい試合だった。 

 試合内容の素晴らしさもそうなのだが、この会場の一体感に納得をしてしまう事実がひとつある。それは、今回の試合のチケットは手売りで販売されたということだ。さらに、ほとんどの格闘技選手が同じように手売りで販売するという。以前、私はそれが疑問で、別の格闘家にこのような質問をぶつけたことがある。そして失礼な質問だったと、今でも後悔している。

「なぜ格闘家はチケットを手売りするんでしょうか?(もっと効率の良い方法で売り)その時間で練習をした方がより良いのでは?」

 彼の回答は、私の予想を上回るものだった。

「それはね、違うんです。格闘家がチケットを手売りするのは『いつも応援してくれてありがとう』という、感謝の念を込めて手売りするんです。これは、自分からのお礼なんです」

 矢島選手も同じ思いだったのかは分からない。しかし、チケットを全て売ることは並大抵のことではない。それでもひとが集まるのは、「彼の試合だったら見に行きたい!」と思わせる何かがあるわけだ。彼の人望と人柄が透けて見えた。決して技術がある選手ではないが、攻めて攻めて攻めまくるファイトスタイルは観客に喜びを与える。

 そう考えると、格闘家の多くは口コミ力によって支えられている。ここからサッカーは多くのことが学べるのではないだろうか。

 
口コミが一番古くて新しい

 
 では、なぜ口コミなのだろう。今どき口コミ?そう思うひともいるかもしれない。いや、「
今だからこそ口コミ」なのだ。

 インターネットが普及したことで、ひと一人の口コミはいまや世界に繋がっている。下手をすれば、あなたが今隣に座っているひととも繋がることができる。仲間ができれば、話が弾む。話が弾めば、話題が生まれる。話題は口コミとなり広がっていく。

 例えば、友人と飲み会をやるというときに、まずあなたが取る行動は何だろう。「食べログ」や「ぐるなび」といった、口コミをメインとするウェブサイトで飲食店を探すことから始めるのではないだろうか。恐らく、あなたはそこにある、誰かが発した情報や評価をもとにお店を決めることだろう。

 いつだってひとは「ここだけの話」や「うわさ」が大好き。ガンバ大阪の遠藤保仁選手がベビースターラーメンが好きだとか、サンフレッチェ広島の佐藤寿人選手がコーヒー好きだとか。インターネットの発達は、そんな口コミの情報があっという間に手に入るようになった。けれど、それは昔からのサポーターも大して変わらないはず。横浜F・マリノスの栗原勇蔵選手はやんちゃだったとか、元名古屋グランパスの「妖精」ストイコヴィッチが納豆好きだとか。ただ、そんな些細だけど、生きた情報が手に入りやすくなっているかどうかが違いだった、というだけなのだ。どんな些細な情報でもあっという間に拡散することで生まれるピンチと、チャンスが共存しているのだ。

 
「口コミ」の立ち位置

Illustration by kennykiernan
Illustration by kennykiernan

  
 スポーツのテレビ中継が激減している今、なにができるのだろう。それは「口コミの力を利用する」ということではないだろうか。そして口コミを究極化したツールがソーシャルメディアだ。

 特に日本人はTwitterが大好き。世界でTwitterは使用されているが、一番多い言語が英語でその次が日本語なのだという。人口の比率から考えると、日本人がTwitterを多く使用している。

 リツイートという行為一つで、相手が欲する情報を、相手に響くような言葉で伝えることができれば、あっという間に拡散していく。

 Jリーグはどうだろうか。各クラブのもの含め、公式Twitterなどは公式情報の発信に終始してしまって、当たり障りのない「置きにいった」ものが多く、すごくもどかしい。アメリカ、MLS(メジャーリーグサッカー)のFacebookやTwitterをみると、「おいおい、大丈夫かこれ」となるものも多いが、なによりサッカーとの距離がぎゅっと近くなる。

 もちろん、クラブの公式発表という役割も大事なこと。しかし、それでは心に留まらない。タニタ食堂やパインアメの公式Twitterアカウントが毎回面白いつぶやきをしていることで話題となっているように、公式アカウントでもそのような「ハジけた」ツイートをするクラブがあって面白いのではと思う。クラブ内だけではなくJリーグ本体とのさまざまな兼ね合いもあるのかもしれないし、その中で各クラブの広報の方がたは最大限のできることをしているのかもしれない。でも、でもだ。サッカーファンとして、すごくもどかしい

 
自分たちにも生み出せる「口コミ」とは?

 
 ではサッカーファンには何ができるのだろう?サポーター同士などの「内輪向け」の口コミだけでなく、もっと外へと向けた口コミがもっとあってもいいと思う。

 サポーターがサポーターを増やさなければいけない、という義務感がファンに必要だとは思わない。だが、なにかできることがあるとすれば、懸命に声を出して「戦場」のような熱気をつくることと同時に、「また来たい」という口コミを増やすことではないだろうか。

「チャントがわかりませんか?」と声をかけてあげることで「サポーターさんが親切!」となったらどうだろうか。スタジアムDJが選手のチャントを流してあげるというのも良いだろう。他にも先日、子連れのサポーターが「親切にしてもらって嬉しかった」という書き込みがSNSにあるコミュニティ内であった。これだけを見ても「あ、子連れでも安心なんだ」と思うことができればどうだろうか?

 なんてことがないように思えるサービスを一つ取ってみても、大きな改善案が出てくるはずだ。まさか、と思われたひともいることだろう。だが、アナログで古めかしいと思うところにこそ、答えがあるのではないだろうか。

 昨年末、ボクシングの八重樫東選手と井上尚弥選手の世界タイトルマッチで、ももいろクローバーZがハーフタイムショーとしてライブを行ったことは記憶に新しい。テレビで見ていた自分は一瞬呆気に取られてしまったが、ももクロ目当てに見に来ていたひとを含めて、現地で観戦していたひとからは好評だったのだ。これをきっかけとしてボクシングにハマってくれるひとが出たら。それは現地で生まれた口コミの力」と言っても良いのではないだろうか。

 
 もちろんJリーグは飲食店ではないし、サッカー選手は格闘家と違う。もちろん「チケットを手売りしろ!」とは言えない。だが、
ひとは見えるところからでしか判断ができない。ならば、見えるところを。そしてできることをすることで、良い口コミを増やしていけば、さらにJリーグの観客が増えていくと確信している。

 口コミ力を制するもの世界を制す、かどうかは分からない。だが、口コミという最先端のアナログツールにも一つ答えがある。そんな気がしている。

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About kanero

kanero
黒髪のかねろ:好きなスポーツはサッカーに野球、バスケやボクシング。おまけに陸上。興味があるものは色々。鉄道研究部副部長で乗り鉄派。合唱団経歴20年でバス担当。復興支援の記事も書く。書けるものならなんだって書いてしまう習性を持つ。