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いまさら聞けない、ちょっと詳しいサッカー用語講座。「ダイアゴナルラン」編

少し前にDEAR Magazine(このサイト)に投下されたJリーグ女子の本音は、戦術の話を好んで寄稿している僕の胸に突き刺さるものだった。

「ダイアゴナルな動きに中盤が釣られ中央にスペースが生まれたがアンカーがディレイで対応し前線のプレスバックでボールを奪った」この文字に目が滑る。感覚的に言うと、ベンチャー企業社長のインタビューを読んでいるような感覚と一緒。アジェンダ?ノマド?ええい、もうジャーサラダとスムージー食ってろ!無駄にかっこよく書きやがって!とアレルギー反応。

 

確かにサッカーの戦術用語は難しく、とっつきにくい印象が付きまとう。しかし、専門用語をしっかりと理解することで、サッカーを違った角度、深度から楽しむことが出来る。すでに言葉の意味を知っているひとにとっても、理解を深めることは無駄にはならないはずだ。

 ということで、「そろそろもう少しサッカーに詳しくなりたい…」そんなあなたに向けて、「ちょっと詳しいサッカー用語講座」をお届けしたい。

 初回となる今回のテーマは、「ダイアゴナルラン」。「なんかよくわからないけど、昨日の飲み会でもサッカー好きな先輩が使ってたし、とりあえず使っとけ!」というきみから一歩抜け出す、明日へのヒントになれば幸いだ。

 
ダイアゴナルランとは
?

 
ダイアゴナルラン。難解なサッカー専門用語らしく、カタカナ語だ。語源は英語の「
Diagonal run」。直訳すると、「斜めに走ること」だ。「ダイアゴナル」は、直訳すると「斜め」だ。完。

 
ダイアゴナルランが重要な
理由、その1

 
 これでは何の解説にもなっていない気がするので、「斜めに走ること」がどうしてサッカーにおいて重要なのかを考えよう。この「ダイアゴナルラン」は、攻撃の選手にとって重要な技術の
1つだ。守備の状況で、この言葉が出てくることは少ない。また、ボールを持たない状況においての動きを指して「ダイアゴナル・ラン」という言葉が使われがちな傾向もある。

まず、1つ目の長所は「ボールを見ながら動ける」という点だ。ゴールを向いて走ると、パスを出す味方を見ることが出来ない。イメージするのは難しくはないと思うが、ゴールに向かって真っすぐ走った場合、パスを出す選手を視界に収めることが出来ない。そうなると、どうしても難易度は上がってしまう。振り向いた状態でボールを一瞬見て、全速力で前に走る。そのまま後ろから飛んできたボールを処理するのは、とんでもなく難しい。ファン・ペルシーがゴールへ向かって走りながら直接ヘディングシュートを決めたことがあるが、このゴールは年間のベストゴール候補にもなった。

 

 勿論、まっすぐゴールに向かって走り、そのままシュートを撃つことが出来れば、理想的だ。しかし、ボールを出す側にとっても、ボールを受ける側にとっても、難易度が跳ね上がる。だからこそ、ダイアゴナル・ランが効果的になる。後ろを向いて受けるのと比べると、斜めの状態でボールを受けることにはメリットが多い。当然斜めに動くことによって、ボールとパスを出す選手を見ながら動くことが出来る。

また、ゴールを向いた状態に持ち込みやすいのもメリットだ。後ろを向いて相手DFを背負った状態ではボールを守ることが重視されるが、斜めに走りながら受ければスピードに乗った状態でDFと勝負することが可能になる。相手が出遅れれば、そのままゴールに向かってシュートを狙えるのだ。

相手DFの体制が整っていて前に進むことが難しくなった場合には、体を入れることが可能になる。この「体を入れる」というのは、相手DFとボールの間に自分の体を置くことだ。

つまり、この↑の状態である。DFはボールを取りたいのだが、相手の身体に阻まれて足が届かない。前を向けない場合は、この状態にも移行しやすい。斜めに走ることは、攻撃の選手に「前を向く」と「後ろを向く」という2つの選択肢を与えるのだ。最初から決めて動くよりも、状況に応じて柔軟に決めることは難しい。しかし、それは大きなメリットとなる。

ダイアゴナルランが重要な理由、その2

 
 1つ目の理由は、攻撃側の目線からダイアゴナルランの重要性を説明した。2つ目の理由は、守備側の目線から考えてみよう。

多くのチームが、ゾーンディフェンスと言われる守備システムを採用している。この「ゾーンディフェンス」については近い将来説明したいと思うので、今回は「4人のDFが、横に自分の担当エリアを区切っている」と考えてほしい。

 普通にFWがゴールに向かって走る場合、1人のDFの担当ゾーン内で動いていくことになる。こうなると、相手の迷いを生むことは難しい。しかし、斜めに走ることになれば話は別だ。担当するゾーンにおいて相手を追いかけることによって、DFは図のように動かされる。味方が動かされたところに走り込めば、それによってチャンスも生まれやすい。

また、2人のDF2つのゾーンを横切る相手に対応する場合、ミスが起こりやすい。実際のピッチには線が引かれていないので、「どこまで追いかけていくべきか」が解りにくいのだ。2人が1人に引き付けられてしまえば、他の選手が空く。2人の選手が「自分の仕事ではない」と考えれば、大きなチャンスになるかもしれない。

 

バイエルン・ミュンヘンの前線が見せた、ダイアゴナルランを生かした攻撃を見てみよう。レヴァンドフスキが斜めに動き出し、ついてきた相手DFが空けてしまったスペースにミュラーが入り込む。

 
ダイアゴナルランが重要な
理由、その3

 
 また、サイドに流れる「ダイアゴナルラン」も非常に面白い。特に、相手の
SBの死角に入り込むことは、相手の守備を崩すきっかけになりやすい。次の図を見てほしい。

 SBの死角を狙い、斜めに走り込むことによって、相手のCBがゾーンから出てこなければならない状況を作り出す。

この状況でボールを持てれば、「CBを釣り出した」という状態になる。本来は中央のゾーンを守るCBは、背が高くてパワーに優れることが多い。一方で、スピード面には弱点を抱えがちだ。

そんなCBが、中のゾーンから外のゾーンへと出てきてしまった。相手のFWは、ボールを持ってドリブルを仕掛けようとしている。これは、危険な状態だ。元々CBが守っていた位置を、誰かが埋めなければならない。この図では、SBが埋めに戻っている。しかし、SBは攻撃力に優れた選手が多い傾向にある。そんな選手が中に入らなければならない状態は、良い状態とは言えない。CBは状況的に自分の背後を把握することが出来ず、思い切って奪いにいくことも難しい。

ルイス・スアレスがリバプール時代に見せたこのゴールは、サイド方向への効果的な「ダイアゴナルラン」だ。CBを釣り出すだけではなく、そのままシュートを決めてしまった。

これも、効果的な一例だ。斜めに動くことでオフサイドにならない状況を作り出し、パスコースを生む。更に、CBから遠ざかることも出来ている。

 いかがだっただろうか。是非、明日からサッカー観戦時に「ダイアゴナルラン」を使ってほしい。あなたは既に「ダイアゴナルラン」の基礎を理解している。お洒落なスポーツバーに意中のあの子を誘い、試合を見ながら「岡崎のダイアゴナルランで、CBを釣り出したプレーが効いたな」とコメントすることが出来るだけでなく、サッカーを知らないあの子に解りやすく説明することも出来るのだ。サッカー用語の可能性は、無限大だ。サッカー用語を正しく理解し、是非自分だけの使い方を見つけてほしい。

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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