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ドイツ代表、ジェローム・ボアテングから学ぶ「一流のDF」になる方法

W杯で世界の頂点に立ったドイツ代表のDFラインを支え、破壊的な攻撃力を誇るバイエルン・ミュンヘンの砦となるCB。ジェローム・ボアテングは、間違いなく世界の五指に足を踏み入れているCBだ。今回は、彼のロングインタビューから「一流のCB」の思考を探ろう。日本代表が最も必要とする「世界レベルのCB」を育てるヒントも、彼の言葉には詰まっているはずだ。 

DFが攻撃を知ることの可能性

 
 マンチェスター・シティ時代には輝きを放てなかったものの、バイエルン・ミュンヘンで過ごした数年での成長は著しい。「父の様だった」と語る名将ユップ・ハインケスの厳しい指導によってチームの主軸に定着し、戦術研究家ペップ・グアルディオラに新しい価値観を教え込まれた。世界中のフットボーラーが指導を受けたいと思うであろう
2人の指導者との出会いは、彼を急速に成長させた。

 

 2006年に「純粋なDF」としては初めてのバロンドーラーとなったイタリア人CBファビオ・カンナバーロも「個人的には、ボアテングこそが世界一のCBだと思っている」と述べた。EURO2016で欧州の頂点を狙うドイツ代表にとっても、彼は欠かすことの出来ないカードだ。

 ボアテングが初めてDFとしてプレーするようになったのは、14歳のときだった。彼は6歳から攻撃的なポジションでプレーしており、ヘルタ・ベルリンのユースでも左ウイングとして活躍していた。チームの守備陣に怪我人が相次いだことをきっかけに、監督に「今日はDFをやってくれないか」と頼まれた。それが、彼の才能が開花するきっかけとなる。

「ずっと攻撃的な選手としてプレーしていたので、僕はトップシークレットを知っていた。暗号のようなものだ。蓄積されたデータといってもいいのかもしれない。ストライカーがどこに、どうやって行きたいのかを知っていた。当然だよ。僕も、少し前まで彼らと同じだったんだから。子どもの頃の経験は、未だにDFとしてプレーする自分の中に基礎として残っている」

 前線からの転向経験を持つCBは、少なくない。一流の選手を育てるために、多くのポジションを経験させることの重要性にも繋がってくる部分だろう。様々なポジション経験によって天職となるポジションを発見出来る可能性は高まり、それまで培った技術を違ったポジションで昇華することも可能になる。

U-23代表で活躍した植田直通も、FWからCBにコンバートしたのは高校生になってからだ。今までの経験を生かしていくことが出来れば、CBとしての経験の浅さをカバーすることも出来る。 

現代的な、守備の概念的理解

 
「しかし、
DFとはどんなものだろうただ、相手の前で壁になるだけではない。すべての動き、全てのタックル、パス、タックル、クリア。ピッチにおけるすべての行動が、要因として繋がっている。すべての判断はチームの戦術の一部であり、それは『相手のチームが得点するのを防ぐ』という一点に集約される」

 ボアテングは、守備を非常に包括的に捉えている。攻撃と守備を分離することがない現代サッカーの申し子であるヨアヒム・レーヴやペップ・グアルディオラに指導された経験が、現代的なCBの思考を作り上げた。CBは守るのではなく、「相手のチームが得点することを防ぐため」に常に行動するのだ。全てのプレーは、別々に存在するようで複雑に絡み合っている。

DFの仕事はすべて、コミュニケーションから始まる。驚きはまったくないとは思うが、仲間との連携は何よりも重要だ。センターバックというポジションでプレーする場合、隣にいる選手と話さなければならない。また、自分の前でプレーする中盤ともコミュニケーションを取る必要がある。どの方向にボールを送って欲しいか、というのを確認しなければならない。いつも一緒に練習しているバイエルンの選手であれば、どのようにチームの選手がプレーしたいか理解している。どういうことをしたいか、したくないか。攻守においてどちらに走りたいか、左右どちらの足にボールが欲しいか。だからこそ、そこまで多く喋る必要はなくなる」

 チームの中でプレーするCBにおいて、当然味方とのコミュニケーションは重要だ。しかし、MFがどのような方向から、どちらの足にボールを送って欲しいかまでを考慮しながらプレー出来るCBは多くないだろう。 

攻撃における基準点としてのCB

 
 ポゼッションの開始点となる上で、細かな気配りこそが重要になる。
CBからのパスが丁寧であれば、MFは無駄な動きを挟むことなく次のパスに移ることが出来る。サウサンプトンに移籍してから、吉田麻也のキックは大きく変化した。鋭いパスを中盤に入れる能力は、ヨーロッパでは間違いなく必要だ。

「ゴールを防ぐというミッションには、終わりがない。攻撃をストップしても、また間髪入れずに相手の攻撃が始まるかもしれない。GKを除けば、僕が一番後方にいる選手となる。ボールを奪った瞬間の私の仕事は、相手を一気に間延びさせることだ。速攻の起点になることは、CBにとって重要な仕事。だからボールを奪うか、味方から貰ったタイミングで、最初にストライカーの位置を確認する。ピッチで一番遠い選手を使うことで、密集した状態を打開することが出来る。国内リーグでは、それは簡単ではない。ボールを持った時、相手守備陣が既に9枚揃っていることすらある。だから、完璧なタイミングで完璧な場所にロングキックを届けることが必要だ。難しいことではないだろう

 ロングキックの重要性は、以前と比べると語られることは少なくなった。どちらかというと、組み立てに絡むようなパスが重要視される傾向にある。ユベントスのイタリア代表CBレオナルド・ボヌッチやドイツ代表のマッツ・フンメルスのように、一撃必殺のロングボールは絶対的な武器だ。


boateng longpass and laserpass vs bvb from Football Hunting Reserve on Vimeo.

 彼のロングキックを満喫出来るのが、この動画だ。実際にボールを持った瞬間、最前線の動きを良く見ていることが解るはずだ。キック精度と広い視野に加え、恐ろしいのはキックの予備動作が少ないこと。ロングボールを蹴ることを相手に悟らせないまま、完璧なピンポイントキックを送り込む。

「攻撃と守備を関連付けた場合、試合中に休む時間はない。ボールを送り込んだ瞬間には、相手のカウンターについて考えている。世界最高のレベルでは、攻守がとんでもない速度で入れ替わる。味方がシュートを撃った瞬間にすら、相手のストライカーを見失うかもしれない。特に相手がバルセロナやレアル・マドリードであれば、DFに休む時間などない」

 常に思考を続けること。DFにとって、シンプルな意識こそが重要になる。常に相手FWを意識し、攻撃の起点になる。CBは今や「守る」だけの存在ではない。試合の全てをコントロールする司令塔であり、ピッチ内の監督だ。攻守を関連付けるような展開の速い練習だけでなく、「DFとしての思考法」を身に着けるような訓練も必要になってくるだろう。

 

Photo on top credit: Uwe Hermann via Visualhunt / CC BY-SA

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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