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フリースタイルフットボール日本代表・Ko-suke / 「理性」と「感性」のハイブリッドセオリー

当たり前だが、フリースタイルフットボールは一人でプレーするものだ。だから「日本代表」はその年に一人しか存在しない。その唯一の日本代表で、アジア大会、さらに今年の11月にロンドンで開催される世界大会、「Red Bull Street Style World Final」に出場するのがフリースタイラーの「Ko-suke」だ。

「獲れます」。世界大会についてそう話すKo-sukeは、世界トップクラスのフリースタイラーであると同時に、東京工業大学大学院の物理電子システム創造専攻で学業を両立する大学院生でもある。そして、まだあどけなさの残るその表情は、人生のひとつの岐路に立ち、揺れる、ごく普通の若者のものだった。

 
Ko-sukeってどんなフリースタイラー?

 
「オールラウンド」の先にある「クリエイティビティ」

 2015年のアジアチャンピオンでもあり、5月に開催された「Japan Freestyle Football Championship 2016(以下JFFC)」で日本一となり世界大会への出場権を手にしたKo-suke。彼の武器は「オールラウンド性」と「オリジナリティ」だ。

 フリースタイルにはロウアー(立った状態でボールをまたぐ技)やブロック(ボールを脚で挟む技)、シッティング(座った状態でボールを扱う技)など様々な技のジャンルがあるが、Ko-sukeはそれらのジャンルの技をオールマイティーに、かつ高次元でこなすのが特徴。


Asian Freestyle Football Championship 2015 in Jakarta 決勝戦でのKo-sukeのパフォーマンス

  
「特にシッティングに関しては、客観的に見て、自分が世界で一番うまい、というか、世界で一番いいシッティングをしていると思ってます。作ってるうちに、シッティングが一番ぼくのなかで膨らんでくるんです」

 さらに、Ko-sukeの最大の武器はオールラウンドのその先にある独創性だ。隙のない、幅広いプレーを土台に散りばめられるオリジナリティ溢れるプレーは、世界で高く評価されている。

「世界はあるひとつのジャンルに特化しているプレーヤーが多かったり、オールラウンドだとしてもその分オリジナリティの部分がスポイルされているプレーヤーが多いんですが、立っても座ってもすべてハイレベルにこなし、さらにクリエイティビティを出せるのが自分のスタイルです」とKo-suke。

今回世界各地からフリースタイルのトッププレーヤーが審査員として集まった、前述のJFFC。そんな世界基準のジャッジの中で彼が評価されたのも、まさに世界基準のクリエイティビティだ。

そして、日本のフリースタイルシーンはオリジナリティの分野において常に世界のトップを走る。つまり、それはKo-sukeが世界において最もクリエイティブなプレーヤーのひとりだということだ。

 Ko-sukeは自分のスタイルについて、「前は色んなひとの技をコピーしまくって、良いとこ取りしたようなプレーヤーだった」という。現代はインターネットやソーシャルメディアを通して、世界の様々なプレーをリアルタイムで見ることができる。10数年前にはいなかった、フリースタイルシーンを切り開いた「お手本」となるプレーヤーもいる。そういった背景は現代のフリースタイラーの技術を飛躍的に高めている。

 しかし、どれだけ技術的にうまくなったとしても、教科書にある技を表面的に真似ただけでは決して「その先」に進むことはできない。

 Ko-sukeは、「なぜその技をやりたいのか?その技とは何なのか?どうやって生まれたのか?生み出したひとはなぜやろう思ったのか?」を突き詰めて考え、本当の意味を知ることで、技がもつ文脈、考え方まで「自分のもの」にした。そこで吸収した、自分が手本にした技やスタイルを生み出した「オリジナル」なプレーヤーたちのエッセンスは、Ko-sukeのフリースタイルに「個性」を与えた。

「オールマイティ」であること。「オリジナル」であること。

 一見、遠いもののように感じてしまうが、「人まね」を限界まで突き詰めることで、幅広い確かな技術に創造性が加わり、世界トップクラスのプレーヤーへとのし上がったのだ。

 淡々とプレーすることも多かったスタイルも、次第に「熱」を帯びたものに変わっていった。JFFCでのパフォーマンス中に印象的だった、闘志を剥き出しにしたガッツポーズがその表れだ。 

論理的な思考力+直感力=創造性

 

 そんなKo-sukeは小さい頃から、ひとつのことに没頭して研究するのが大好きだったという。「ベイブレードの部品を自分で分解、改造したりして町内で一番になったり、ハマったカードゲームの戦術をひたすら研究しまくって大人含めて市内で一番になった、みたいなこともありました」と笑う。

 中学時代、サッカー部の友達のリフティングに衝撃を受けフリースタイルに出会ってからは、ネット上に集まるフリースタイル動画を漁り没頭するようになった。白と黒がはっきり別れる部活のサッカーとは違う、勝ち負けに捉われない魅力に惹かれ、高校時代にはフリースタイルに専念する。

「こういう性格だったおかげで、ものがどうぶつかって、どう回転が影響する、ものとものの動きや組み合わせ、力学的なものの直感的な把握力はかなり磨かれたと思います。ボールと足なので、ボールのどの部分をどこでどう蹴ったらこう動く、みたいなのは考えれば誰でもわかることなんですけど、それをさらに直感的に理解できる感覚は、自分のフリースタイルにもかなり生きています。それこそカードゲームとかも、大会中の手札の切り方に生きてるような気がします。幼少期にテレビゲームとかじゃなく、モノに触れて遊んだのは大きかったなと思います」

 そして現在は、フリースタイラーとしての活動をしながら、東京工業大学大学院で物理電子システム創造専攻を学ぶ学生でもある。

「アトムフォトニクス、ナノフォトニクスとかいったりするんですけど、原子に光をあててどんな作用をさせるかという研究で、興味半分でやってます

なんだか、つじつまがあった気がする。 

「めちゃくちゃ揺れてます」

 

 Ko-sukeがフリースタイラーとして大きなターニングポイントとなる世界大会を控える一方で、「高橋幸佑」としても分岐点を迎えようとしている。

「正直いって、めちゃくちゃ揺れてます」

とKo-suke。大学生活が今年度で最後となる彼は、ごく普通の学生と同じように、進路、つまり自分の将来についてひとつの決断をしなければならない。

「なので、就職活動もしました。フリースタイル一本でプロとしてやっていくのか、内定先に就職して仕事と両立してやっていくのか、正直にいうとまだ決めれてません。色んなひとの人生や考えかたを聞いて、自分にとってなにがベストな選択なのかをいまは考えてます」

「ただ、いまは余計なことを考えずに、できることをしっかりやろうと思っています。とにかく今年度はフリースタイルに全力を賭すことしか考えてません。そして、フリースタイルでどこまで人生ってやれるのかということを深く考えたいです。残りの時間でそこを突き詰めて、最後の瞬間に天秤にかけようと思ってます。そういう意味で、世界大会の結果もやっぱり関わってきますし、今年がターニングポイントになると自覚してます」 

 

自分が思う「世界で一番いいフリースタイル」をできる可能性は、自分が一番ある

 

 4年前、徳田耕太郎(Tokura)が史上最年少、アジア人初の世界チャンピオンとなったとき、「2割は嬉しかった。8割は、悔しかった」とKo-sukeは話す。

 フリースタイルをはじめて間もないころ、お互いのプレーを褒め合い、刺激し合った。はじめて出た大会の対戦相手も、同じく大会初参加の徳田だった。試合は徳田が勝ち、そのまま優勝した。そんな切磋琢磨し合った同世代のプレーヤーが勝ち取った憧れの舞台に、今度は自身が挑む。

「フリースタイラーはアスリートであると同時にアーティストでもあります。そのせめぎ合いの中で、自分のフリースタイルについて悩む部分だってあります。評価するのは自分じゃないので、他の人がどう思うかはわからないですし。ただ、自分が思う『世界で一番いいフリースタイル』をできる可能性は、自分が一番あると思っています。今ある課題を修正して、しっかりと持っているものを出せば、(世界は)獲れると思います」

 フリースタイルのパイオニアである横田陽介の、「世界大会に出て人生が変わった」という言葉が頭の中に強烈に残っている。11月、世界は若者にどんな未来を見せるのか。

それはまだ誰にもわからないが、たったひとつのボールが、ひとりの人間の人生を大きく突き動かす瞬間になることは間違いない。そして、さまざまな「理性」と「感性」のあいだで悩み、導き出す新たな答えは、若者の未来をさらに力強いものにするはずだ。

Photos by Kento Hirai

 

Ko-suke ショートドキュメンタリームービー

Red bull Street Style World Final 直前インタビュー

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About Takuya Wada

Takuya Wada
和田拓也: DEAR Magazine編集長。バンドマンやらシステムエンジニアやら世界1周を経て、NYのデジタルマガジン、HEAPS編集部でインターンシップとして勤務し、企画から取材、執筆を担当する。その後、DEAR Magazineを立ち上げる。カレーと揚げ物が3度の飯より好き。

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