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「ピッチの奥」にみえる、世界の景色

東南アジアとヨーロッパを放浪していたとき、行く先々でサッカーと出会いました。それぞれの国や街に、それぞれのサッカーが存在していて、それぞれの文化がある。そしてもちろん、ピッチともたくさん出会うことになります。たとえゴールがなくたって、「誰かがそこでボールを蹴り始めればそれはもうピッチということで良し」という勝手な解釈によりカウントした場所も多々あります。そんな中、僕が惹かれていったものは、国や街によって全く違う顔を見せる「ピッチの奥」でした。

生きることは苦しみである

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カンボジアの首都、プノンペン。楽しそうにプレーをする彼らの奥には、国民の90%以上が仏教徒であるこの国が見えました。カンボジアは自由宗教の国だそうですが、仏教に関連した建物が立ち並ぶのを見ると、90%が仏教徒であることに納得がいきます。カンボジアで多くを占める「上座部仏教」は、「生きることは苦しみであり、出家をして功徳を積む者だけが救われる」という考え方(出家主義)に基づいているそうですが、楽しそうにプレーをする子供達を見ると、「フットボールをすることは苦しみではない」のだよと、わざわざ教えてあげる必要はなさそうでした。

 

安心感のない高層ビル

カンボジア王国からカンボジアに名が変わり、正式にこの国が誕生したのは、わずか23年前、1993年のことです。交通ルールも未だに曖昧で、バイクに乗るときはヘルメットを被らないし、逆走だってしちゃいます。やっと最近になってノーヘルが取り締まりの対象になったよう。先に逆走を取り締まってほしいものです。

プノンペン・オリンピックスタジアムの奥には、「これから」のカンボジアを表すように、建設中の高層ビルが見えます。僕たちからしてみれば、逆に神秘的にさえ感じてしまうコンクリートのスタンドの奥に、同じ色をした高層ビル。日本のいわゆる「建設中」のそれとは違い、安心感のかけらも感じなかったのは、つい最近建設中に落下事故で亡くなった方がいるという話を聞いたからでしょうか。よくあること、だと聞いたからでしょうか。

 

日向ぼっこゾーン

所変わって、スペイン・バスク地方。バルセロナがあるカタルーニャ地方とは、同じ国であり同じ国ではないような、そんな場所です。静岡県ほどの人口しかないこの場所には、アスレティック・ビルバオというチームがあります。バスク人のみで構成されているこのチームは、これまでに2部降格を経験したことが一度もないという、驚異的な育成の成果を出し続けています。

そんなチームのピッチの奥には、自然豊かな、というより豊かすぎる景色が広がっていました。「のびのびとプレーをする」彼らをそのまま表したような、そんな景色。あまりの気持ち良さに、誰一人いないピッチの周りで日本人が一人日向ぼっこをするという、まさにダントツの「のびのびとしたプレー」を繰り出してしまいました。施設内には数え切れないほど多くのピッチと、数え切れないほど多くの「日向ぼっこゾーン」(筆者認定)がありました。

 

雨。また雨。

天気が悪いんです。いつも。

折り畳み傘をあんなに頻繁に出し入れしたのは初めてでしたし、面倒くさくなってずぶ濡れのまま歩いたのも初めてでした。

ロンドンの郊外にあるイングランド6部リーグSt Albans city FCのホームスタジアム(といってもとても小さな)のピッチの奥は、ロンドンのどんよりとした気候を表すかのように、深い霧で何一つ見えませんでした。

ただ、それがまた尋常じゃないくらい神秘的な雰囲気を作り出し、サッカー発祥の地を感じさせるような歴史あるピッチと相まって、アンフィールドやスタンフォード・ブリッジよりも、僕に感動を与えてくれました。ちなみにこの日ここで試合を行ったワトフォードFC U-21の指揮官は、あのリバプールでもプレーした、元オーストラリア代表のケーヒル。残念ながら試合に敗れた彼は、ピッチの奥の深い霧のような目で、選手たちをじっと見つめていました。

 

“ビーチ”の奥

先日幕を閉じたEURO2016で、見事優勝を果たしたポルトガル。小国にも関わらず、世界の強豪国に堂々と名を連ね、さらにはクリスティアーノ・ロナウドなど名選手を何人も輩出し、あのモウリーニョ監督をサッカー界に送り出したこの国には、一体どんな秘密が隠されているのか?敬愛して止まないモウリーニョの古巣FCポルトを観るために、ポルトガルはポルトに降り立ちました。

FCポルトの育成に関してそれはもう素晴らしいものでしたが、せっかくここまで来たのだからビーチにでも行くかと思い立ちました。一人寂しくビーチに行くと、そこにはナイスバディの美女と同じ数のサッカー少年がボールを蹴っていました。

「楽しくサッカーをする」というのは、こういうことをいうのかと一人ニヤニヤしてしまったのを思い出します。そういえばポルトガル人は、どこの国のひとよりもサッカーというスポーツを楽しんでいたなあと、いまになって思うのです。

 

おしゃれなパリと、アンケート

パリといえばおしゃれ、おしゃれといえばパリ。そんなフランスの首都には、街のあらゆるところにピッチがありました。ジーンズを履いてボールを蹴る青年が多かった(気がします)。

さすがにエッフェル塔や凱旋門の周りにはボールを蹴っているひとが一人もいなくて、「そこは誰かサッカーやっとこうよ」とカメラ片手にふてくされている僕からアンケートと題して5ユーロを取っていったおばさんの笑顔を、僕は一生忘れません。

 

そこでしか見ることの出来ない景色

東京ディズニーランドの周りには、高い建造物が建つことは決してないそうです。

「夢の国」というコンセプトを守る為に、中から現実の世界を見ることがないように演出がされています。

サッカーの「ピッチの奥」には、その場所でしか見ることの出来ない景色が広がっています。

演出なのか、それとも偶然なのか。

もしこれら全てが演出なのだとしたら、サッカーのピッチも「夢の国」ということでいいのではないかと、ディズニーランドと同じテンションでピッチに出向く僕は、そう思うのです。

もし僕が日本の「ピッチの奥」を演出するのなら、入り口には鳥居を(もちろん一礼をしてから入ってくださいね)、正面には古民家風のクラブハウスを建てて、満員電車を5分に一回は通過させ(ごくたまに線路にひとが立ち入ったため遅れます)、パンケーキ屋さんにはお洒落な女子が行列をつくっていて、後ろを振り返ればカラオケボックスがあり、治安は良い方がいいですね、桜の木も植えておきましょう。夕方になると「良い子の皆さん」へ向けた放送が聞こえてくれば、あとは完璧です。

 

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About KA'zuma

KA'zuma
KA'zuma: 1992年生まれ東京都出身。いくつかのサッカーメディアで記事執筆しています。2016年世界のサッカーを観るためにアジアとヨーロッパ15ヶ国以上を歩き回って来ました。サッカーと本と、時々写真で生きています。

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