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いまさら聞けない、ちょっと詳しいサッカー用語講座。「バイタルエリア」編

「そろそろ、サッカーに詳しくなりたい…」「だけど、専門用語は敷居が高過ぎて怖い…」そんなあなたに向けて、結城康平がお送りする「ちょっと詳しいサッカー用語講座」。第二回のテーマは、「バイタルエリア」だ。

 
バイタルエリアとは?

 
「バイタルエリアに香川が侵入。スルーパスが通った!狙うか!どうだ!ゴーーーーール!!!!!」

 もしかしたら、あなたはこのような解説を聞いたことがあるかもしれない。バイタルエリアとは、英語で表記すると”vital area”になる。これは、直訳すると「危険なエリア」という意味。日本では、中盤とDFラインの間に出来るスペースを意味する。完。

という訳にもいかないので、「バイタルエリア」についてもう一歩踏み込んで解説していこう。

バイタルエリア画像①

 
バイタルエリアは「和製英語」

 
「バイタルエリア」という単語は、英語圏のフットボール関連記事では取り上げられることは多くない。更に、その「バイタルエリア」は欧州のメディアでは文字通り「危険なスペース」を意味するものであり、文脈に依存することが多い単語でもある。

中盤を意味することもあるが、ペナルティエリア内を意味することもある。チームにとって危険なエリアであれば、それが「バイタルエリア」になる。

「バイタルエリア」はアメリカのサッカー関連書籍に登場することもあるものの、厳密な定義として成り立っている単語ではない。

日本では「バイタルエリア」という単語はサッカーの世界において日常的に使われている。これは、ある意味で「トップ下」を花形として捉える日本フットボールの性質とも関連しているのではないだろうか。

大空翼のような万能トップ下を求め、中田英寿、本田圭佑、香川真司…。日本代表のエースとなったテクニカルな選手達は、トップ下に攻撃を託すフットボールと共に進化した。

 一方で、ヨーロッパのフットボールにおいては「黄金のゾーン」と呼ばれるエリアを指導者は強調し、得点を第一として考える傾向がある。

FWというポジションを育てることに拘りを持つイタリアでは、飛び出したGKの脇を抜くシュート練習があるという。強烈な飢餓感を剥き出しにするストライカー達が、欧州のフットボールを支えている。ズラタン・イブラヒモビッチが「マンチェスターの神になる」と言い放ったように、彼らは常に注目を浴び、上がったハードルを飛び越えようとする。

 
「バイタルエリア」=「ゾーン
14

 
 欧州フットボールの世界でも「バイタルエリアの重要性」が見逃されている訳ではない。しかし、彼らは「バイタルエリア」という単語を使わない。フットボールのピッチを
7本の直線を使って18個の四角に区切る。その結果、日本で「バイタルエリア」と呼ばれるスペースは「14」となる。このスペースこそ、「ゾーン14と呼ばれるものだ。

バイタルエリア画像②
*左方向が自陣、右方向が敵陣

 
 このエリアに注目することは、成功するチームを発見することに繋がる。フランスW杯などに関するHornらの研究(2000)と、 Taylorの研究(2002)得点に繋がるゾーンに関する(2002)
によれば、「ゾーン14」はピッチ上で最も「アシストパスの起点となる」場所だ。「ゾーン14」に多くのパスを入れることによって、アシストが生まれる確率は高まる。

 
複数の選択肢を与える、バイタルエリア

 
 学術研究でも、技術的に優れた選手が「バイタルエリアで大混乱を引き起こす」ことは証明されている。このエリアでボールを受けることによって、テクニックを武器とするボール保持者は複数の選択肢を得ることが出来るからだ。

 基本的に、中盤のラインをパス、もしくはドリブル突破することで侵入するバイタルエリアにおいて、後ろからのプレッシャーは限定的だ。このゾーンでのファールは、致命傷にもなりかねないからだ。ここで、ボール保持者の選択肢はパスだけではない。FWを囮にして、自らドリブルでゴールに近づくことも出来る。また、そのままシュートを狙うことも可能だ。

バイタルエリア画像③

バイタルエリア画像④

 ここで重要なのは、相手の動きを見ながら動くことが可能になるという点でもある。DFがボールを奪いに来たときは、味方を使うことが最優先だろう。DFが躊躇しているなら、ドリブルやシュートで仕掛けることが出来る。

バイタルエリアを主戦場とする天才肌のMFに、ドイツのメスト・エジルがいる。彼の感覚的なプレーから、バイタルエリアの重要性を見てみよう。

バイタルエリア画像⑤

エジルはドリブルによって、中途半端に崩れるバイタルエリアに侵入。

バイタルエリア画像⑥

相手CBの意識がエジルに向いた瞬間、FWが一気に背後に走り込む。エジルは相手の意識を利用しつつ、背後に正確なスルーパスを送り込む。

 
どのようにバイタルエリアを使うべきか?

 
 Horn
の研究は、非常に面白い事実を提示する。得点に繋がるとき、「ゾーン14」にボールがあるとき間は「平均2.7秒」だということだ。バイタルエリアにボールを入れるだけでは、得点には繋がらない。重要なのは、相手の守備が崩れた瞬間を狙うことだ。「8秒以下」でシュートまで持ち込むことが、1つの鍵だ。

 バイタルエリアで、受ける向きも重要になるだろう。前向きで侵入できれば、当然ボール受けようとする味方の位置を把握することが出来る。相手CBを背負ってボールを受ける状態では、大きなチャンスに繋げることは難しい。だからこそ、直接ボールを受けられないときには、FWのポストプレーを受ける必要がある。

バイタルエリア画像⑦

 いかがだっただろうか。是非、明日からサッカー観戦時に「バイタルエリア」を使ってほしい。あなたは既に「バイタルエリア」の基礎を理解している。お洒落なスポーツバーに意中のあの子を誘い、試合を見ながら「ゾーン14を使うことのメリット、知っているかい?」ということが出来るだけでなく、サッカーを知らないあの子に解りやすく説明することも出来るのだ。サッカー用語の可能性は、無限大だ。サッカー用語を正しく理解し、是非自分だけの使い方を見つけてほしい。

 

参考文献
HORN, R., M. WILLIAMS & A. GRANT, 2000. Analysis of France in World Cup 1998 and Euro 2000. Insight, 4, 40-43

GRANT, A., T. REILLY, M. WILLIAMS & A. BORRIE, 1998b. Analysis of the Successful and Unsuccessful Teams in the 1998 World Cup. Insight, 2(1), 21-23

TAYLOR, S., J. ENSUM & M. WILLIAMS, 2002. A Quantitative Analysis of Goals Scored. Insight, 5(4), 28-31

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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