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動画「Get Up and Go!』/Pokémon GO公式より

ポケモンGOと、拡張現実が開くスポーツの未来

ポケットモンスター。僕と同世代の人々にとっては、小さな白黒の画面を覗き込むきっかけになったゲームだろう。3匹の中から選んだ最初の相棒は、一生忘れることはないのかもしれない。僕の場合は、ヒトカゲだった。広大なカントー地方を自由自在に旅していく感覚は、今でも自分の中に残っている。

『Pokémon GO』公式トレーラーより
『Pokémon GO』公式トレーラーより

 
そんなポケモンが、スマートフォンアプリとして世界中に一大ブームを巻き起こしている。ポケモン
GOと呼ばれるゲームは、カメラとGPSの機能を利用することによって「プレイヤーが歩きながらポケモンを探すこと」を可能にしている。多くのプレイヤーが家を出て、ポケモンを探し歩いているのだ。ポケモンGOの加熱ぶりもある程度収束してきたが、このゲームがもつ技術はスポーツエンターテインメントすら変えねない。

 

「拡張現実(AR)」の概念

 

 実際に撮影した写真にポケットモンスターの画像を融合することによって、実際の世界にポケットモンスターが存在しているように見える。現実世界とコンピューターによって作られたデータの融合は、「拡張現実」(AR: Augmented Reality)と呼ばれる。この単語が生まれたのは、1996年にポケットモンスターが生まれる前だった。

仮想的な世界を体験することが可能となる「仮想現実(VR)」の概念とは異なり、拡張現実は実際の空間と重なり合うように存在している。

動画「Get Up and Go!』/Pokémon GO公式より

 
 
デジタルデバイスを通したクローズドな「仮想世界」であったインターネットと「実世界」とのつながりを生み出したARは、仮想世界と物理世界の境界線を曖昧なものにし、インターネット(デジタル)≠リアルという構図は成り立たなくなった。

 例えば美術館に行けば、スマホのカメラを通すだけで詳細な絵の説明が読める時代が来ることも遠くはない。伝統芸術の店でARの技術を応用することによって、職人が作る製品の製造工程を見ることが出来るかもしれない。そしてこの技術によりマーケティングは大きく変わっていく。

 

「仮想現実(VR)」の活用

 

 一方仮想現実(VR)は、「実際の現実世界を拡張」するARと異なり、CGや別空間の映像を使ってまるで、「現実世界のように」表現することが出来る技術だ。VRの活用は、アメリカで盛んに議論されているテーマだ。FORTUNE紙の記者であるHoward Yuは、仮想現実が情報の世界を大きく変えることになると予想する。

実際、アメリカでは仮想現実をスポーツの面で活用しようという試みが少なくない。1つは、練習面での活用だ。アメリカンフットボールの世界では、既にこういった最新機器を使った練習も取り入れられている。試合の映像を見ながら、判断能力を高める。

 また、VRを利用することによって遠い位置から試合を楽しむことが出来るようになるかもしれない。NBAのクリーブランド・キャバリアーズを保有するダン・ギルバート氏はスタジアムのキャパシティーという問題を、VRが解決するのではないかと考えている。観客で溢れるスタジアムを仮想的に体験出来れば、その権利を売ることも可能になる。

 

拡張現実はスポーツ界へのインバウンドでも活用可能か?

 

 単純な宣伝効果でも、ポケモンGOは驚異的だ。Netbooster社を統括するJens Nielsen氏の言葉を借りれば、「直接的な宣伝を嫌う傾向にあった18歳から24歳の『ミレニアル世代』を一瞬で取り込んだ」ポケモンGOは、広告の世界を大きく揺るがした。

 サッカークラブも、既にポケモンGOを利用したマーケティングに着手している。ポルトガルの名門ベンフィカ、プレミアリーグの強豪マンチェスター・シティの2チームは、クラブの公式Twitterを使って情報を発信。

 

 

ベンフィカは「世界一美しいポケストップで、ポケモンを捕まえよう!」と呟き、マンチェスター・シティは「エティハドスタジアムで、ジムリーダーと勝負しよう!」という。マーケティングの面から考えれば、ARには「人の流れ」を生み出すポテンシャルが秘められているのである。

 ポケモンGOの狙いもそこにある。彼らも最終的には、場所に応じて更に細分化されたサービスなどを搭載することを目指している。プレーしていく過程で実際の動きを生み出すことは、広告という視点から見ても桁違いのポテンシャルを秘めている。それはレッドブルのインスタグラムを活用したアプローチにも似ているが、宣伝というものは「直接的である必要はない」のかもしれない。

Redbull 公式Instagrmスクリーンショット
Redbull 公式Instagrmスクリーンショット

 
 あくまで間接的に、「何かを楽しむ場」を提供すること。付加的にマーケティングするという価値観は、もしかしたら新時代のものなのかもしれない。派手なレストランの宣伝を見て辿り着いたレストランと、珍しいポケモンを探していて辿り着いたレストラン。

どちらの広告効果が大きいのか、という部分に単純に答えを出すことは難しい。スタジアムという場所も、フットボールだけを観戦する場所ではなくなってきている。

オランダのアムステルダム・アリーナは、アヤックスのホームスタジアムとして知られている。レストランや商業施設なども隣接しているスタジアムは、様々なイベントの会場としても使われている。FCフローニンゲンのスタジアムであるユーロボルフも、商業施設やオフィスを融合することによって多彩な顧客を獲得した。

子どもや若者、家族連れを獲得するために、ポケモンGOは有効なツールになり得る。それ自体が直接的な観客増加に繋がらないとしても、長期的に見れば大きなメリットを生むかもしれない。

 

スタジアム内でのAR活用例

 

 欧州のフットボールクラブも、拡張現実を既にマーケティングに取り入れている。ペプシコーラは、Blipparという企業と共にキャンペーンを実施。アプリを起動した状態でペプシコーラのボトルにプリントされた選手の写真を撮ると、実際の選手がリフティングする動画を見ることが出来る仕組みとなっている。

 また、ポーツマスFCもオフィシャルプログラムとのコラボレーションを実施。Blipparを起動してプログラムの1ページを撮ると、限定のビデオを再生することが出来る。スタジアムでプログラムを読みながら、スマートフォンで動画をダウンロード出来る。

ARをスタジアムで使えるようにすれば、プログラムの1ページを撮影するだけで、スマートフォンの中で本日のスターティングイレブンを再生することが出来るかもしれない。選手達の特別なインタビューを、選手の写真を撮影することで見ることが出来るようになるかもしれない。スタジアムのロゴを撮影すれば、そのスタジアムの地図が見られるようになるかもしれない。ARはスタジアムでの観戦を、更に楽しいものに変えてくるポテンシャルを秘めている。

ポケモンGOは世界的にブームを巻き起こしているとはいっても、あくまで1つのゲームに過ぎない。しかし、「拡張現実」という概念は興味深いものだ。「ポケモンGOは、10年間が必要だと考えられていた拡張現実のスピードを5年間進めた」ともいわれている。また、VRも実際にスタジアムでの観戦ができないユーザの体験を大きく変えようとしている。

このような変化の中で、フットボールクラブは技術の進歩をどのように生かしていくのだろうか。ARは観戦体験を、VRは視聴体験というスポーツエンターテイメントを進化させ、サッカーを新たなる領域に導くものになるのかもしれない。

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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