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「青森」の「サッカー」のみ扱う、超ニッチな専門誌。ローカルと紙メディアがつくる未来

 

まさかのジョルディ・アルバ、来八

 

『青森ゴールに載りたいから頑張ってる』っていってくれる子供達がいて、それは本当に嬉しいですね」

 そう夏目さんがいう横で、子供たちに「夢を与えたい」と松坂さんはいった。現役のスペイン代表であり、FCバルセロナに所属するジョルディ・アルバを八戸に招待する試みが立ち上がったとき、松坂さんも運営メンバーとして企画に参加していた。紆余曲折を経てジョルディ・アルバが来日。八戸の地で、目を輝かせながらジョルディ・アルバとボールを蹴る子供たちの姿を見て、胸がいっぱいになった。

Photo courtesy of AOMORI GOAL
Photo courtesy of AOMORI GOAL

 

 今月2日(2016年10月)、JFLに所属するヴァンラーレ八戸のホームスタジアムとして、県内で初めてJ3の規程規格に達したサッカー専用スタジアム、「ダイハツスタジアム」がオープン。同時にこけら落しとして初のホーム戦が行われ、5,028人が来場。J3で戦えるだけの集客力、そのポテンシャルは十分だと確認できた(J3チーム全体での平均入場者数は約2,800人。*参考:http://www.jleague.jp/stats/SFTD14.html)。

ヴァンラーレ八戸に続いてJFL入りしたラインメール青森が今シーズンのリーグ戦セカンドステージで首位を獲得するなど、県全体におけるサッカーに対する気運は高まりつつある。

あとはいちメディアとして、どのように青森のサッカー文化に寄与していくか。構想段階ながら、水面下では様々な試みを企画しているようだ。

 

メディア激動の時代のカギ

 

 日本のサッカーは、”グローバル”化の波が世界を飲み込む時期と同じくして急速に発展を遂げた。このときカギになったのが「外部視点の取り入れ」である。

鹿島アントラーズがジーコをチームに迎え入れて進化したように、第三者からの視点が彼我の現在地を浮かび上がらせる。そしてこれは何もサッカーだけに限った話ではなく、すべてにいえることだ。

しかし、青森ゴールはその流れに逆向する異色の存在だ。徹底してローカルに、「内部視点」を追求している。

ひたすら”青森”という枠の中でその活動を続けてきた7年間。その軌跡を振り返り、周囲を見渡すと、図らずも他分野にも似たテイストのメディアあることに気がつく。

たとえば、「離島経済新聞社(離島)」や「YADOKARI(住居)」、「ジモコロ(地元)」、「TO magazine(東京ローカル)」……。これらのメディアはどれも何か一つのモノ・コトに関わる情報を伝えることに特化している特化型メディア(便宜上この名称に)であり、それぞれ確かな支持を集めている。

今日、触れられる情報の量は爆発的に増加した。それはイコール情報を扱うメディアが雨後の筍のように出現したということだ。当然競争は激しく、光るものがなければ消えていく。

情報が氾濫する激流の中で、何を拾い、伝えるのか。メディアとしての確固たる信念を持つこと。それを貫くことができたなら、それは激流の中にあっても揺るぎない碇となって、船を支え続ける指針になるのかもしれない。

 

地方サッカー専門誌が収益増加する理由

 

 青森ゴールの存在がことさらに異色然として目に映る理由は、”県に関わるサッカー情報”専門誌というのは前代未聞さだけでなく、「徐々に売り上げが上がってきている」ということ。

情報そのものの質は高くても、情報がニッチなため購買層は確実に限られるし、出版不況が叫ばれる現在、紙メディアの収益増加は簡単なことではない。

好調の要因を編集部の皆さんに聞いてみると、彼らの言葉に共通するのは、

青森に寄り添い続けたから

ということだった。

 特化型メディアは(伝えているモノ・コトの)業界にネットワークができるため、そこに絡めた収益手法ができてくる。前述した離島経済新聞社は、大手通信会社KDDIと協力体制をとり、KDDIが運営する「au WALLET Market」と離島の産品を掛け合わせた「しまものマルシェ」という通信販売サービスを展開している。

青森ゴールの収益は雑誌販売や広告収入以外に、取材先で撮影した写真の販売、学童施設への訪問サッカー教室などがある。写真の販売は読者からの要望で始まり、訪問サッカー教室も青森県サッカー協会からの依頼で始まった。

青森ゴールは青森のサッカーにずっと寄り添ってきた。それが周囲に認められてきた。好調の要因は結局ここに尽きるのかもしれない。

 

 世界の情報へのアクセスが容易になった今、海外トップリーグの情報も簡単に手に入る。しかしどこまでソレが進もうと、サッカーの媒体となる”人”はどこまでもローカルな存在であり続ける。

例えばリヴァプールFCが好きな筆者だが、マージーサイドの風土や文化は現地で体験しないと分からない。それに空しさを感じないことがないわけではない。

「他県から購入の注文がきたり、地域のサッカー大会の運営を依頼されるようになってきて、ありがたいですよね」と感慨深そうに松坂さんは話す。

青森のサッカーを変えたいという思いから始まった、未知の航路をゆく航海。最初はコンパスも帆も碇もない状態だったが、強い意志で船は前進していった。

昔から何かを変えるのは”馬鹿者”か”若者”か”よそ者”だという。

松坂さんは(自称)馬鹿者で、若者で、よそ者だった。十数年とサッカーに縁のない生活を送っていたかつてのよそ者は、今、滾る青森のサッカーへの愛を隠さずにこういう。

「青森をサッカー王国に」

”サッカー王国青森”。とても、いい響きだ。

 

 

AOMORI GOAL
HP:http://www.aomori-goal.com/
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Photos by Yuuki Honda

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About Honda Yuuki

Honda Yuuki
本田悠喜(ほんだ ゆうき):自転車に乗って日本一周中。気ままに放浪中。ビタミン不足中。 津々浦々、ボールの周辺で喜怒哀楽を紡ぐ人々の思いを届けるために、今日もチャリを漕ぐ。

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