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起こせ、史上最大のジャイアントキリング。ロンドン発、日本人アマチュアたちの挑戦状

サッカーの母国、イングランドはロンドン。世界最高の舞台に挑む、知られざる日本人アマチュアチーム。

 

サッカーの母国、イングランドはロンドン。世界最高のサッカーリーグのひとつ、プレミアリーグのアーセナルFCやチェルシーFCが拠点とする街だ。そのロンドンにある小さなサッカークラブが「J.L.Rovers FC(J.L ローバーズ FC)」。現地に在住する日本人を中心に活動する、アマチュアサッカークラブだ。なんとローバーズは日本人チームとして初のFA(The Football Association / イングランドサッカー協会)の公式認可を受けているチームだ。サッカー好きなら「おっ」と思ってしまうかもしれない。だが、誰が想像できるだろう。彼らが世界のスーパースターたちと、本気で勝負しようとしているなんて。

【当記事は2016年2月14日配信記事になります】

 ローバーズが目指すのは、日本人クラブ初のFA Cup(The Football Association Challenge Cup)出場。FAカップとは、イングランドサッカー協会が主催する、今年で145年の歴史を持つ世界最古の、由緒あるサッカー大会だ。日本の天皇杯をはじめ、多くの国がモデルとしている。

 1部リーグであるプレミアリーグと大きく異なるのは、イングランドサッカー協会の加盟チームであれば、プロアマ問わず全てのサッカークラブに参加権が与えられるトーナメント戦だということ。つまり、アマチュアのチームが世界のスタープレーヤー相手に、ジャイアントキリング(大番狂わせ)を起こせるかもしれない、実際に数々の奇跡が生まれた夢のような場所なのだ。

 イングランドサッカー協会の認可をもつローバーズは現在、FA公式リーグ「Middlesex County Football League Division One」に所属しており、FAカップ出場まであと2つ昇格が必要となるカテゴリにいる。活動資金を募ったクラウドファンディングは瞬く間に広がり、開始から2日で資金調達を達成するという快挙を成し遂げ、彼らの活動は日本でも知られるところとなった。


(写真左:代表:吉田 キャプテン:小松)

サッカーの母国で、日本人が勝つ瞬間

「はじめは週に一回、普通にプレーしてただけだったんです」。そう話すのは吉田禎晴(よしだ・さだはる)。ローバーズを運営する、この壮大な夢を叶えようとする張本人だ。

「5年前、前身のチームに入って気軽にやり始めたのがきっかけです。サッカー好きが週に1回集まって、地元のローカルリーグで試合をしているくらいでした。でもそんな中で、自分たちが勝つにはどうすればいいかを試行錯誤してたんです」

 ロンドンは元Jリーガーなどが、セカンドキャリアで来ることも多いという。彼らが一番はじめにぶつかる壁はサッカーの質がまったく異なるということ。「そんな中で、イングランドのサッカーに適合しつつ、テクニックやスピードだったり、日本のいいところを出そうとした。そしたら、少しずつ勝ち始めたんです。イングランドでは『日本人、サッカーできるの?』という雰囲気がやはりあったりする。そんな環境で、日本人が勝ち続けたら?」

 爽快のひとことしかない。「そしたら、もっと上へ行けるんじゃないか、という欲求が出てきたんです」

「イングランドのサッカーのおもしろいところはグラスルーツで夢があること。勝ち続ければ、隣の街のなんでもない小さなチームが、ある日プレミアリーグのスター達と勝負するんです」。歴史の深いFAカップはイングランドの人々にとって特別なもので、試合の日には大きな注目を集め独特の雰囲気が流れる。地元の飲み仲間が、手紙を届けてくれる郵便局員が、花屋の兄ちゃんが、そんな舞台でルーニー、エジルと同じピッチに立って勝負する。そんなこともこの国では決して夢物語ではないのが、これ以上ない、極上のロマンだ。


サッカーという文化

 マンチェスターを訪れた3年前、衝撃を覚え、同時になんとも言えないくらい羨ましく、悔しかったのを覚えている。ヨーロッパの頂点を決めるチャンピオンズリーグ。マンチェスター・ユナイテッドが迎えるのは、スペインのレアル・マドリード。生まれて間もない子どもから、年季の入った老夫婦まで、クラブのユニフォームを来て1週間前から大騒ぎ。パブではいい年をした大人がスペイン人とやりあっている。


 その理由のひとつが、マンチェスターで育った若者が世界最高の選手となって帰ってくることだった。試合前の選手コール、レアルが「世界最多」を誇るサポーターの壮絶なブーイングを受ける中、ユナイテッドのアナウンサーの怒号のようなコールで、満員オールド・トラフォードがスタンディングオベーションで包まれた。コールされたのはクリスティアーノ・ロナウドだった。


Photo by Takuya Wada


「イングランドは生活の中にサッカーが根付いてる。何につけてもサッカーですし、ロンドンだけでも100以上のチームがある。なんでもない住宅街にいきなりスタジアムが出てくることなんてざらです。日本でもサッカーは少しずつ人気が出ていますが、まだまだマイノリティ。それをいかにオープンにしてマジョリティーにするかが大事だと思います。ワールドカップのヒーローが、自分が住んでる地域のヒーローになって、クラブと地域のつながりが生まれれば、グラスルーツのスポーツになっていくんじゃないでしょうか」

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サッカークラブというコミュニティになりたい

 吉田はローバーズの活動を通して、「いま住んでいる地域に認められたい」と話す。「イングランドでは、日本人でも、サッカーという土俵で戦えれば、認められ、賞賛される。勝ち続ければ平等にチャンスが与えられます。そうすることで、クラブのある地域に認めてもらえるし、応援しに来てくれる。週末試合を見に来たひとに、楽しい時間、場所を提供できるような、ひとに繋がりを与えるコミュニティになりたいと思っています。将来的にはピッチや、スタジアムも持ちたいですね」

 ヨーロッパの下部リーグには日本人のプロクラブはいくつか存在するが、イギリスはビザの取得が厳しいこともあり、まだ存在しない。誰もやったことがないことだからこそ、やりがいを感じているとも吉田は話す。ただ小さなアマチュアクラブというだけではない、日本のサッカーというマイノリティが、イングランドで起こそうとしているジャイアントキリングへの道は、まだ始まったばかりだ。

 

 

*J.L.Roversの活動資金を募るクラウドファンディングは、最終的に100万円を超える支援のもとサクセスした。彼らの挑戦を、是非継続的にチェックしていただきたい。(現在は応募終了)

Makuake / 日本初、英国FA公認サッカークラブ「J.L.Rovers」のFA杯への挑戦!
https://www.makuake.com/project/rovers/

J.L.Rovers
Facebook: https://www.facebook.com/J.L.Rovers/
Twitter: https://twitter.com/JLRFC

Photos courtesy of J.L.Rovers

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About Takuya Wada

Takuya Wada
和田拓也: DEAR Magazine編集長。バンドマンやらシステムエンジニアやら世界1周を経て、NYのデジタルマガジン、HEAPS編集部でインターンシップとして勤務し、企画から取材、執筆を担当する。その後、DEAR Magazineを立ち上げる。カレーと揚げ物が3度の飯より好き。

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