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Photo credit: kanegen via Visual Hunt / CC BY
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山口蛍と矢島慎也。J1昇格プレーオフで垣間見せた、日本代表の未来

セレッソを救った「助っ人」の強み。

 

セレッソ大阪の攻撃は、基本的に6番のソウザを経由してスタートする。サイドバックへ散らす正確なパスだけでなく、両サイドのサポートにも顔を出すなど、広い範囲を動き回ることが出来る汎用性の高い選手だ。

彼は強烈なミドルシュートという武器を持っており、中央で岡山の3バックの攻略に苦しむ

セレッソにとって悪い状況で「ボールを奪われない」という意味で重要な保険となった。雨に濡れたピッチでバウンドさせて狙うシュートは、岡山のカウンターには繋がりにくい。柿谷の足下を狙うようなパスは彼の強みを存分に活かす可能性がある一方で、奪われて反撃を浴びることにもなりかねない。

ソウザの強烈なミドルは岡山のゴールを脅かす一方で、「詰まった攻撃を終了させる」ことが出来るリセットの役割も果たしていた。

勝負所でチームを救った守護神キム・ジンヒョンも見逃せない。滑るボールの感触を何度となく確かめながら、ファジアーノの抵抗を寸前で食い止めていた。大きな身体で抑え込むようにボールの勢いを殺し、ファンブルのリスクを最小限に食い止める冷静なプレーは非常に丁寧なものだった。

また、2人の選手が「助っ人」としての経験を感じさせたのが両サイドバックへのパスだった。

ファジアーノ岡山の2シャドーは相手ボランチを押し下げ、中央に厚みを作ることが出来る一方で、どうしてもサイドへの守備が手薄になる。彼らが中央でプレーする場合、岡山のサイドを守るのはウイングバックのみ。

そうなると、セレッソの両サイドバックは「安全な逃げ場所」になる。キム・ジンヒョン、ソウザの2人はリスクを軽減するために大切な時間帯でサイドバックへのパスを多用。全体の陣形を把握していた2人によって、奪われたボールをすぐにでも取り返したい岡山は苦しめられた。試合の流れを知る2人の経験豊富な「助っ人」は、岡山の勢いを受け流す術を知っていた。

 

山口蛍が作り出す「基準点」

 

ファジアーノが様々な仕掛けを見せる中、冷静にスペースを埋め続けたのが山口蛍だった。

岡山の2シャドーが高い位置でセレッソCBの隙を作り出そうと献身的に動き回り、矢島が常にスペースを狙う。高い位置やサイドに積極的に進出していくセレッソのソウザが作り出してしまう中央のギャップは、山口によって徹底的に潰されていた。

元々中盤で動きすぎてしまう癖があった山口は、広い範囲を動き回るソウザと組むことになったことによる影響か、代表でハリルホジッチ監督の影響を受けているのかは解らないが、自分のポジションを守る意識が非常に強まっている。

自陣のDFラインの前、絶対に譲ってはならないスペースに残る。動き回ることもスキルだが、我慢して留まることも重要なスキルだ。山口が正しいポジションを保てば、周りもそれを基準点としてポジションを調整出来る。

浦和レッズの阿部勇樹は、岡田JAPANにおいて文字通り基準点となり、攻守に躍動する長谷部誠と遠藤保仁を輝かせた。同様に柴崎岳(鹿島)、大島僚太(川崎)のような広い範囲を動き回れるタレントを輝かせるためには中盤を支える「基準」が必要になる。

日本代表でも発揮されているボールを奪うスキルを、山口は「最も重要なスペース」で使えるようになりつつある。様々な仕掛けを狙う岡山の2シャドーだったが、セレッソの中盤を塞ぎ続ける山口の存在感は別格だった。後半の早い段階で岡山の攻め急ぎを誘発したのは、彼らの安定した守備だった。

値千金の先制点を奪ったセットプレーも含め「中央をコンビネーションで崩せない」ときにでも焦らずにプレーを続けることが出来たことが、勝負を分けた。その「落ち着き」をチームにもたらしたのは無骨に背中で語る、寡黙な守備的MFの姿だった。

 

それぞれの道を進む2チームが、目指す未来

 

代表クラスの選手を多く有するセレッソ大阪は、チームとしてのバランスに苦しみながらも要所を抑えてJ1の舞台へと戻ることになった。柿谷の強みを生かせるような「狭い距離で複数人が連携する攻撃」をデザインすることが出来れば、1部でも屈指の攻撃力を誇るチームとなる。そんな中でも、山口は変わらずに中盤を支え続ける役割となる。代表でも定位置を確保しつつある彼は、一部リーグでも多くのアタッカーを封じることになるだろう。

一方でファジアーノ岡山は、来期は自動昇格を目指してチームを作り上げていくことになるはずだ。岩政が契約満了し、矢島は浦和レッズへの復帰、豊川といった中心選手の去就も不透明という難しさはあるものの、カウンターだけではなくボールを持った時も全体で攻撃をイメージ出来ていたように、チームとして目指すべき道は見えた。完成形に向けて積み上げていくことが出来れば、今回の敗北は「必要不可欠だった」糧となる。

山口と矢島は、チームの中核としてプレーする能力を高いレベルでも示し続けなければならない。五輪代表ではサポート役に徹した矢島と、ドイツの舞台で結果を出せずに苦しんだ山口。日本代表の主役として輝くために、2人

が越えなければならない壁は決して低いものではない。チームに埋没するのでも、チームと衝突するのでもなく、組織の中で周りと調和しながら存在感を放つこと。世代交代を迎えつつある日本代表は、彼らの更なる成長を静かに待っている。

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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