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フリースタイルフットボールのパイオニアに学ぶ、「答えがない時代の蹴飛ばし方」/ 横田陽介

今から約10年前、ひとりの日本人フリースタイラーが世界に衝撃を与えた。

世の中というのはわからないことだらけ。しかも大人になったらさらに増えるなんて、大人になるまで知らなかった。

ゆとりなんていわれる僕らが、決まった答えのない時代に考えるべきことは何なのか。時代を切り開いた「パイオニア」の話からヒントを探してみよう。

今回は、同じミレニアル世代の、フリースタイルフットボールを切り開いたパイオニアだ。

 

リフティングの技を競うフリースタイルフットボール。実は日本の競技人口がロシア、ポーランドに次いで世界第3位だということを知っているひとは少ないかもしれない。少しずつフリースタイラーの姿をメディアで目にすることも増えて、いまでは多くの日本人が国際大会に出場するようにもなった。

昨年ロンドンで開催された世界大会でも日本人の「Ko-suke」が準優勝し、世界のフリースタイラーたちは日本のフリースタイルを一目見て「ジャパンスタイル」といい表すほどだ。

そんな「大国」となった日本のフリースタイルシーンだが、ひとりの日本人が世界で起こした「ある衝撃」から動き出した。

横田陽介。2008年に初開催された世界最大のフリースタイルバトル、「Red Bull Street Style」に日本人として初出場し、一気に決勝まで駆け上がり準優勝を果たしたトップフリースタイラーだ。

あれから約10年、並み居る世界のフリースタイラーたちをバトルで打ち負かしたフリースタイルフットボールのパイオニアは、戦う相手をフリースタイラーから「社会」に変えていた。

 

出会ってすぐに決めたこと、「これで食っていく」

 

ー高校時代、プロサッカー選手を諦めたときにフリースタイルフットボールに出会って、当時はどういう状況だったんですか?

「俺が10年前にフリースタイルを始めたときは、日本でフリースタイルやってるひとは今じゃ考えられないくらい少なかったです。だからわりとすぐにトップクラスになれて、2006年に初めて世界大会(Masters of the Game in Amsterdam 2006)に招待されたんですよね」

ー当時印象に残ってることってありますか?

「あの時はオランダまでの飛行機とかも自費で来いって感じだったから、まずそこをどうするかってとこだったなぁ。当時は高校出たばっかりでパッと出せる金額じゃなかったし」

「だから吉祥寺のB&Dでフルタイムでバイトして、当時入ってた社会人フットサルのチームが全国大会まで進出してたからバイト後にフットサルの2部練があったりで、そのあと深夜にフリースタイルの練習、3時間くらい寝てまたバイト、っていう。あの時はずっと眠気との戦いだった(笑)」


Photo courtesy of Yosuke Yokota

 

「でも辛いと思ったことなんかなくて。フリースタイルに出会ってすぐ、『俺はこれで食っていく』って決めてたし」

ーもう決めてたんですか?シーンそのものがなかったのに。

「なんか決めてましたね。なんでだろ?なんかいけそうだなみたいな(笑)これでトップになれるっていう根拠のない自信があった。

でも、もし俺がいまのフリースタイルシーン見たらとてもじゃないけど始めないかな(笑)。始めたきっかけは、できそうって思ったから。だから、いまのレベルが高いフリースタイルを見て始める人達を本当にリスペクトしてます」

 

「スポーツ」から「ストリートカルチャー」へ

 

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©Red Bull Content Pool

ーそれから2年後、世界最大規模のバトルの大会、RBSS(Red Bull Street Style)が初開催されて、日本代表として出場しますよね。自身にとってどういう大会でした?

「個人の挑戦だった前回とは全く違うものだった。このころは世界のシーンが出来上がりつつあったし、何より日本予選もあって日本代表として出たから、日本を背負ってるっていう感覚を初めて持った。『日本のために俺はやってやる』って。結果準優勝っていう結果を残せた」

ーこのとき結果以上に、横田さんのフリースタイルが世界のシーンの中で大きな意味を残したと思っていて。

先日のロンドン大会でも、「あのときのヨースケを見てフリースタイルを始めた」という海外のフリースタイラーが多かった。みんな「ヨースケはレジェンドだ」って。

「レジェンドってのはあんまりしっくりこないんですけどね…(笑)」

ー当時横田さんのフリースタイルの何が新しかったんですか?

「あの時は決勝でやって優勝したのがフランスのSean Garnier(セアン・ガルニエ)ってやつだったんですけど、集まった42カ国の出場者の中で、決勝に出た俺とセアンの二人だけがジーパンにスニーカーの格好で、ダンスの要素を取り入れてたんです」


©Red Bull Content Pool

「あの時のフリースタイルフットボールって、まだサッカーのスキルの延長線上にあるもので、ボールのコントロールを突き詰めたものがほとんだった」

「そこに音に合わせてリズムをとったり、ボールを蹴るスキル以外のストリートの要素を取り入れたのが、見てたひとに衝撃を与えたみたいで。それをきっかけに、フリースタイルってそういうものなんだっていうイメージが一気に広まりました」

Sean garnier vs Yosuke Yokota in Red Bull Street Style WORLD FINAL 2008

「街中でボールが転がってきたら蹴れるっていうのが俺にとって一番かっこいい。そんなときにサッカーの格好なんてしてないじゃないですか。だからそういう格好でやるのが一番リアルだなって」

海外のフリースタイラーは口を揃えて「クレイジーだ」とも
海外のフリースタイラーは口を揃えて「クレイジーだ」とも

 

「いまはバトルする相手が変わった」

 


Photo by Takuya Wada

手本も教科書もないころ、「ストリートカルチャー」としてのフリースタイルフットボールを切り開いた横田が、次に挑んでいること。それは日本のフリースタイルのシーンをまとめ、オーバーグラウンドに押し上げることだ。

ーチーム(Ball Beat Crew)でのパフォーマンスや、フリースタイラーの様々なサポート、日本大会(Japan Freestyle Football Championship/JFFC)をオーガナイズしたりなど、フリースタイラー個人以外の活動にシフトしたのはどうしてですか?

「やっぱり、日本のフリースタイルっていうシーンをもっと大きくしたいというのがあります。フリースタイラーって結局個人でやるものだから、変わってたり個人主義者が多くて、いままでシーンをまとめるやつがいなかった。

でもシーンをもっと良くするためには、フリースタイルに関わってるひとりひとりが考えることがいま一番必要だと思ってるんです。だからそれをみんなが意識するように仕向けるのが俺のいまの仕事かな」

「日本大会をはじめたのも、数年前世界で日本人が勝てない時期が続いて、日本人が世界で負けるのが本当に悔しかったから。だから体系だった大会をきちんと作って、世界で勝てる日本人を選ぼうって」


Photo by Takuya Wada

「俺、負けるのが死ぬほど嫌いなんです。嫌いすぎて勝てない勝負はあまりしたくない(笑)」

ーバトルをプレーヤーとしてガシガシやってたときと、変わったことはありますか?

「自分自身は何も変わってないんだけど、勝負をする相手が変わったかな。やっぱり勝負するのが好きで、バトラーとしてガシガシやってるときは、フリースタイルというシーンの中で勝負していて、相手はフリースタイラーだった。だけど、今は社会が相手」

「フリースタイルっていうシーンはまだすごく小さいシーンだし、その中で勝負して勝つよりも、もっと大きな相手と勝負したい。だから、社会にフリースタイルっていうカルチャーの存在を認めてもらうことに挑む、っていう勝負をしてます」

 

「パイオニア」が大切にしている、時代をぶち壊すための3つのこと

 

オリジナルであれ。スタイルをもて

ー横田さんが大事にしてることってあるんですか?

「やっぱり『オリジナルであること、スタイルを持っていること』。そこへのこだわりはめちゃくちゃあります。

フリースタイルの話でいうと、バトル形式の世界大会が浸透して、純粋に技術を競うスポーツの側面と、オーディエンスも意識したエンターテインメントやクリエイティビティの側面に分かれてます」

Ball Beat Crew/横田が所属するフリースタイルフットボールチーム

「俺は完全に後者。いまはインターネットが発展して、教科書も手本もたくさんあるから技術はみんな本当に高い。新しい技をやってもすぐに真似されちゃうから、オリジナルであることがすごく難しい。でも、だからこそ『オリジナルであること、スタイルを持っていること』がすごく価値があると思ってます。

技術はやっぱり身体能力の差があるし、大技とか難しい技は世界のトップクラスのやつらのほうができる。それでもクリエイティビティ、オリジナリティの部分では日本は今でも抜きん出てるし、俺が昔から常に考えてるのもやっぱりそういうところかな。自分が自分であることをやめたら何もできなくなるので」

ーそういう日本のスタイルも、もとをたどればやっぱり横田さんがやったことって大きいなぁって思います。

どうなんですかね?わからないです(笑)

 

自らを由とせよ

ー座右の銘とかはありますか?

「『好きこそものの上手なれ』とかはよくいうんですけど、最近は「自らを由(よし)とせよ」かなぁ。社訓にもしてて。

フリースタイルフットボールって自由なサッカーって意味じゃないですか。だから自由の本当の意味を考えるんですよ。なんで自分が自由になれるかっていうと、自分を由(理由)としているから。自分が全うしてる責任の上に自由がなりたってる。すべて自分の思うままに好き勝手やることではないんですよね。

例えば、何かあってもひとのせいにしない。すべては自分が引き起こしたこと。それくらいの覚悟がないと、自由にはなれないし、かっこよくなれない。眠いから、金がないから、とか自分の都合で誘いを断らないとかもね。

俺は自分がかっこよくなるために、自由になるためにフリースタイルをやってます。だから全て自己責任で行動するってことは俺にとってすっごく大事なことなんです」

 

よくひとに会え、よく遊べ

ーフリースタイルのかっこよさってなんですか?一つだけ。

「フリースタイルそのものがかっこいいとは俺は別に思ってないです」

ーまじすか!?(一同)

「うん(笑)。みんなフリースタイルやってかっこいいっていってくれるんだけど、なんでなんだろうっていつも考えてる。

ただ、俺がフリースタイルをやるとかっこいい。フリースタイルをやればかっこよくなれる。そう思ってます。

んで、フリースタイルはまだまだかっこよくなれるし、もっとかっこよくしたい。俺だったらもっとできる。それは始めた頃からずっと変わらないですね。だからずっとハマってるのかな」

ーじゃあかっこいいってなんだと思いますか?

こだわりです。かっこよさは全部こだわりから来ると思います。俺は好きであることにこだわってますし、そのためには楽しむことにこだわってるし。

だからこれまで挫折とか辛いこととかも全然ないんですよ(笑)。楽しいことばっかり」

ー悩むんだり迷ったりすることもない?

「ないんですよね(笑)。というより、『わからない』っていう選択肢を選んでるのかな。人生YesかNoの二択じゃないと思うんですよ。

とりあえず『わからない』を選んで、そこに対して飛び込んでYesかNoを判断する材料や情報を集める。

その飛び込み方が思い立ったらとりあえずやってみたり、自分で動いて新しい体験をしてみたり。特にひとと会ってコミュニケーションとることが大事だと思う。

昔だったらフリースタイルの話ができるひとが周りに全然いなかった。ネットも使うには使うんだけど、すごいやつみつけたら直接会いにいって一緒に練習しに行ったり、飯食いに行ったり。そしたらどんどん人生が豊かになっていった」

「フリースタイルに出会って、プロになるって決めて人生変わった。なんでかっていうと、いままでそれまでサッカーしかやってこなくて、遊びとか全く興味なかったんですよ。

でもフリースタイルのプロになるってことは、エンターテインメントのプロなるってこと。遊びや楽しさを提供する立場になる。そのときに自分が遊びを知らなかったら、楽しんでなかったら、ひとを楽しませることなんてできないですよね。

そう思うようになってから、いろんなひとに会って、いろんなとこに遊びに行くようになった。それがなかったら、サッカー以外の沢山のこと、フリースタイルやストリートという新しいサッカーの魅力もわからないままで、ひとに伝えるなんでことできなかった。なので死ぬまで自分が楽しいようにやりたい。

フリースタイルのシーンを盛り上げたいのも、そうなれば自分も楽しいし、自分が楽しければシーンも盛り上がると思ってるから。

だから、いまはシーンを良くすることだけを考えてる。そうすれば必ず、俺が最高に楽しめる未来があるはずだからね」

 

横田陽介
HP:http://yy-freestyle.com/
Instagram: yosukeyokota
Ball Beat Crew HP: https://ballbeatcrew.jimdo.com/

Photos by Komei Ishida

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About Takuya Wada

Takuya Wada
和田拓也: DEAR Magazine編集長。バンドマンやらシステムエンジニアやら世界1周を経て、NYのデジタルマガジン、HEAPS編集部でインターンシップとして勤務し、企画から取材、執筆を担当する。その後、DEAR Magazineを立ち上げる。カレーと揚げ物が3度の飯より好き。

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