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サッカー諦めきれなくて、「映画」を作った /映画監督 谷健二

誰にでも諦めてしまった夢がある。私たちが普段見ているJリーグも、日本代表も、夢を諦めた多くのプレーヤーたちの思いの上にあるものだ。

 一方で、サッカーを諦めなかった人たちも無数にいる。プレーする場所を探し続けるひと、サッカーへの違う関わり方を目指すひと、様々だ。そして、映画監督・谷健二もその中のひとりだ。かつて諦めてしまったサッカーに、彼は「映画」で再挑戦した。

文・インタビュー: Inuunited 写真・編集・構成:和田拓也

 

「映画とサッカー、やっぱりこの2つが、自分の人生で最後に残るんだろうなぁ」

 そう話す谷は、2016年、サッカー漫画『GIANT KILLING』で知られる綱本将也のデビュー作、『U-31』を実写映画化した。『U-31』は輝きを失った元スター選手が再び栄光を掴むために闘う、骨太なストーリーのサッカー漫画だ。

 谷が映画を作り始めたのは30歳。長編映画は37歳でデビューだ。『U-31』も39歳で製作した。決して早いスタートではなかった谷だが、サッカーも同じように遅れたスタートだった。

 「中学3年生からサッカー始めたんですけど、高校では地元で少し強いサッカー部に入りました。ちょうどJリーグブームが起きたこともあって、3年生になるころには80人くらいの大所帯。ずっと補欠でした。

まわりは小学生から始めているのに対し、僕は始めるのが遅かったのもあって、たった3年じゃ限界も見えてないし、全然完全燃焼できてなくて。だから、大学でもサッカーをもっと続けたいなと思ったんです。

 でも成績の都合で大学の選択肢が少なくて(笑)、小さなときから絵を描くのが得意だったので、なんとか進学するために美術の専門学校に通い始めて、大学のデザイン学部に進学してサッカー部に入りました」

 しかし、谷が思った以上に、大学サッカーの壁は高かった。

 「入ってみたら当たり前のようにレベルが高くて。全国各地の選抜だった有望な選手がいたり、調子がよくなってきたタイミングで怪我をしてしまったり。そしたら段々、練習に行かなくなってしまった。後からどんどん入ってくる後輩のプレーを見たときに『次元が違う』と思わされて、大学3年生のときに部活を辞めました」

 

唯一まだ成長したいこと、映画

 

大学4年生のときに、刺激が欲しくてボストンバッグ1つと10万円持って東京に出てきた。そこから、アルバイトや仕事を転々としたという谷。

 しかし、30歳になったころ、谷は会社で働きながら、徐々に映画製制作に没頭していく。

 「上京してきたときに、映画の仕事に就きたいなと漠然とした思いがあって、20代の時は自主映画の手伝いなどもやっていたのですが、気づいたら普通の会社員になっていた。なにか満ち足りない毎日を過ごす中で始めたのが映画製作でした。」

はじめて撮った短編映画が評価され、その活動を続けていくことになる。

 「好きで入ったサッカー部ではずっと補欠。大学でも部活を途中でやめた。

もっと頑張ればなんとかなったかもしれないけど、そこまで至らなかった。口惜しさを感じる前に自分の中で断念してしまったんです。その埋め合わせをするように映画を撮っていたのかもしれません」

「映画を作り始めて、はじめてまわりの人から期待されていて喜んでもらえることがわかりました。そのとき、もしかしたら自分には、映画監督が向いているかもしれない。好きなことをやるのもいいけど、向いてることをやってみようと思ったんです」

 そして谷は、37歳のときに、10年勤めていた会社を辞めた。

 「長編デビュー作を撮り終えたとき、同僚と話すことがあって。彼は仕事にすべてを賭けてたんですよね。何をすれば会社のためになるか、貢献できるか、成長できるかっていうのをすごく考えていたんです。当たり前といえば当たり前ですが(笑)」

 そのときに、常に頭のどこかで映画のことを考えていた谷は、「これでは勝てない」と思い、次の日には10年近く勤めた会社に辞表を出した。映画で勝負することを決めた日だった。

 

サッカーだけが、諦めきれなかった

 

「何となくスルスルっと生きてきたというか。でも何でもちゃんとやってきたっていうより、最初からどこか放り投げてるっていうのが多くて(笑)」

 と、谷は自身について話す。骨太な漫画で、かつスポーツ漫画の実写化という難しいことに挑戦した映画監督からとは思えない、意外な言葉だった。

 「これまで、特に好きで始めたわけじゃない陸上競技で一番になったり、勤めた会社でも同期は次々と退職していく中でそれなりに結果を出して、サッカー以外のことはうまくこなしてたと思うんです。これまでの人生で何か挫折というか、キツいと思うようなこともあまりないんです。これだけは本当に好きだってものも正直ないし、趣味や服とか、モノとかに対する執着もないし..」

 と、自身のことを話す。

 「でも、サッカーに関してだけはやっぱり悔しい気持ちが強くて。中学から始めて、でも大学で途中でやめて。青春時代満たされなかったスポーツだから、サッカーだけはまだ諦めきれないというのがありました。

 原作の『U-31』も、本当に偶然手に取って作品の持つ普遍的なメッセージに一目惚れして、講談社さんやジェフユナイテッド市原・千葉さんに、プロデューサーとともに飛び込みで映画化の交渉をして実現しました」

 谷の今の気持ちは、サッカーをやるために大学進学したときと同じだという。

 「原作者の綱本さんに『10年前の漫画ですけど、本気ですか?』なんて言われたりもしましたが(笑)、サッカーを続けるために移籍を決意した主人公と、映画を撮りたくて仕事を辞めた自分がダブるところもあります。俺はいま、チャレンジするんだ!っていうね。

 自分は映画監督としてもっとやれる。成長できると思っています。壁はあるし、その壁を乗り越えられるかどうかはわからないですが、サッカーを諦めたときのような悔いは残したくないです。

フリーになってここ数年は肩肘張って生きてますが、余裕が出てきたら、家で国内外のサッカーとか好きな映画をボーッと観ていたいなあと思います(笑)それが直近の目標です」

 

インフォメーション

ヨコハマ・フットボール映画祭出品:『U-31』/監督:谷健二 原作:綱本将也

主催: ヨコハマ・フットボール映画祭
2017/2/11 (土) – 2/17 (金) | 7 日間

<ブリリアショートショートシアター>

神奈川県横浜市 西区みなとみらい5−3−1 フィルミー2F

<横浜みなとみらいスポーツパーク>

神奈川県横浜市西区みなとみらい6-2-1

映画『U-31』公式サイト
https://u-31.amebaownd.com/

横浜フットボール映画祭
http://2017.yfff.org/

 

 

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About Inuunited

Inuunited
いぬゆな: ジェフユナイテッド市原・千葉サポーター。「あんまり他のサポーターが書かないことを書こう」と思ってブログを始めたらそこそこヒット。そこそこの文章量とそこそこの文章力には定評がある。