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スコットランド紀行 ー 「世界一近いダービー」。港町、ダンディーを旅して


世界一近い、2つのスタジアムの距離を知っているだろうか。その片方のスタジアムは、ある日本代表選手が所属するクラブのホームグラウンド。そして、その2つのスタジアムでは「世界一のダービー」を観戦することが出来る。

スコットランドの港街、ダンディー。街中に建築家の遊び心が溢れる美しい街に、筆者が訪れたのは昨年のシーズンオフだった。スタジアム巡りと観光、プレシーズンマッチを目的として訪れた街を、友人は「スコットランドで最も美しい街」だという。

  • ダンディー中心部の広場。噴水などがあり、子ども連れの家族も多かった


 ジャーナリズムの街としても知られるダンディーは、筆者が住んでいたグラスゴーや観光地として名高いエジンバラと比べると、落ち着いた印象がある。街の中心部もそこまで広い訳ではなく、ある程度の時間があれば見て回ることが出来る。そんな静かな港町に辿り着いた、
1人の日本人選手がいる。昨年ダンディー・ユナイテッドに加入した、川島永嗣だ。常に海外で挑戦を続ける日本代表の守護神がプレーする、ダンディー・ユナイテッドとはどのようなクラブなのか。ダンディーという街を歩いて紹介していきたい。では、スコットランドへの小旅行へ。

高台から見下ろした、ダンディーの街
高台から見下ろした、ダンディーの街


 空と海の境界線が、解らなくなるほどの青。雨が多いスコットランドにとっては貴重な澄み切った空が、街を訪れた僕を迎えてくれた。息を切らして高台へ向かっていると、地元の老人が声をかけてくれる。「もう少しだぞ、諦めるな
!!」スコットランドらしい柔らかさは、プライドの高いイギリス人とは少し異なる。より牧歌的な雰囲気は、豊かな自然によって生み出されるものなのだろうか。

 

高台から見下ろした、2つのスタジアム
高台から見下ろした、2つのスタジアム

 

 ダービーマッチ。同じ街にあるクラブがぶつかり合うフットボールの醍醐味は、お互いのチームにとって最も大切なものであることが多い。マンチェスターを分かつマンチェスター・ユナイテッドと、マンチェスター・シティが戦うマンチェスター・ダービーは、英国で最も有名なダービーの1つだ。

ダンディーは、「世界一のダービー」が行われる街だ。2つのスタジアムが、世界で最も近いのである。距離にして、たったの270m。徒歩3分ほどで到着出来る距離に、2チームのスタジアムは佇んでいる。青色のスタジアムが、ダンディーFCのホームであるデンズ・パーク。オレンジのスタジアムが、川島が所属するダンディー・ユナイテッドの本拠地タナディス・パークだ。

同じ通りに2つのスタジアムを擁する街は、世界が広いとは言ってもダンディーだけなのではないだろうか。頑張れば、2つのスタジアムを1つの写真に収めることさえ可能だ。同じ通りなのに、違った表情を見せるのも面白い。

  • ダンディーFCのホーム、デンズ・パーク側から

 この距離にあることもあってか、比較的ダンディー・ダービーは友好的なダービーであると言われている。小競り合い程度はあっても、ファンの関係は悪くない。家族の中でダンディーFCファンとダンディー・ユナイテッドファンが共存することもあるという。彼らは同じ通りを分け合う、盟友でもあるのだ。興味深い話がある。ダンディー・ユナイテッドの選手達にとって、アウェイのデンズ・パークでのダービーがある。その時、彼らはハーフタイムにタナディス・パークのロッカールームに戻ることがあるらしい。試合の間に道を少し歩けば、自らのホームスタジアムがある。わざわざ敵地で休息しなくても、ゆったりと休めるということなのだろうか。

ダンディー・ユナイテッドのスタジアムショップ。女性店員が多かった。
ダンディー・ユナイテッドのスタジアムショップ。女性店員が多かった。


 ダンディー・ユナイテッドのクラブショップに訪れると、女性店員が陽気に話しかけてきた。「良いアイテムが沢山でしょ
?」「素敵なオレンジのユニフォームですね」と答えると、彼女は大げさに首を振る。「オレンジじゃないの。ダンディー・ユナイテッドの色は、『タンジェリン』って言うのよ」日本では、マンダリンオレンジという名で知られる鮮やかな柑橘類を示す単語でもあるtangerine(タンジェリン)が、チームのカラーなのだ。「素敵なタンジェリン色のユニフォームですね」と言い直すと、店員はオレンジ色の笑顔を見せた。


 ダンディー・ユナイテッドには、もう
1つ大きな自慢がある。スペインの名門クラブ、FCバルセロナに負けたことがないことだ。1960年代と1980年代、ヨーロッパリーグで戦って4試合全勝。サポーターは「バルセロナの天敵はユベントスでもチェルシーでもない。俺達のダンディー・ユナイテッドだよ」と笑う。最後に「バルセロナと今後試合をすることがないままなら、この記録は破られることもないだろうね」というオチも忘れない。


 素晴らしい街と温和な人々に囲まれる「世界一近いダービー」の街。スコットランドリーグは以前と比べれば、競争力のあるリーグではないだろう。セルティックが資金力を生かしてリーグを支配し、ダンディーの
2チームは優秀な選手を抜かれながら苦しんでいる。試合自体のレベルも、欧州のトップには大きく見劣りする。それでも、川島永嗣が選んだクラブは歴史ある名門だ。素晴らしいシュートストップでチームを勝利に導き、鮮やかなタンジェリン色のユニフォームを着た仲間たちと共に最高の笑顔を咲かせて欲しい。それはきっと、とても素敵なことだ。

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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