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J開幕戦、金崎夢生が見せた「ハーフスペース」の活用。目線を動かす技術

 ドイツのサッカー協会が定義した「ハーフスペース」。フットボールにおいて重要なゾーンとして再理解が進んでいるスペースの考え方だ。ガンバ大阪が鹿島アントラーズを迎えた2016年のJリーグ開幕戦、素晴らしい空気を纏った吹田スタジアムで鹿島の金崎夢生が見せたのは、「ハーフスペース」を活用したオフ・ザ・ボール(ボールを持っていないとき)でボールを引き出す動き、そして相手守備を惑わすチャンスの創出だった。

「ハーフスペース」とは


 バイエルン・ミュンヘンの指揮官ペップ・グアルディオラは、練習場のピッチを区切ることで常に一定のスペースの重要性を示し続けたという。また、ドイツのサッカー協会は、ピッチの横幅を
4本の線で区切った。その中で「ウイングのゾーンと中央のゾーンの間にあるスペース」を、Halbraumとドイツ語では呼ぶ。それを英語へと直訳したものが、「ハーフスペース」だ。

このスペースが重要視される理由は幾つかある。まず1つは、両翼に比べてよりゴールに近い位置でプレー出来ること。そして、中央ほどのプレッシャーを浴びにくいということだ。相手が4バックとなれば、このスペースはCBSBの間になりやすい。どちらの選手が対処するのかも、より不明瞭になる。

 マンチェスター・シティの攻撃的サイドバック、アルゼンチン代表のパブロ・サバレタは、このスペースへの侵入を得意とする。上の画像は、サバレタが2014-2015シーズンに記録した「ハーフスペース」からのアシストだ。アシストの6割以上を、彼はこのスペースへの侵入から生み出している。スペイン代表MFダビド・シルバとの連携によってこのゾーンに入り込むプレーを、彼は最も得意としている。


金崎夢生の見せた「ハーフスペース」活用。


 ガンバ大阪の新スタジアム、市立吹田サッカースタジアムは多くのサポーターで埋まり、初春の陽光に照らされて輝いていた。青く染まった観客席は、チームを後押ししてくれることだろう。ヨーロッパに誇れるスタジアムの誕生は、日本のフットボール界を大きく揺るがすはずだ。
2016年の天皇杯決勝も、このスタジアムで開催されることになった。満員のホームで迎えた開幕戦の相手は名門、鹿島アントラーズ。ACLの影響でスターティングメンバーは少し物足りない部分もあったが、最も重要な試合の1つであることには変わりはない。そんな中見られた、「ハーフスペース」を活用した金崎の予備動作に注目したい。

スローインで受けたボールを、金崎がダイレクトに戻す。DF3人の意識が外に向いたところで、一気にハーフスペースへと走り込む。



 味方がバックパスを受けている間に、一気にハーフスペースへ。サイドバックの藤春は、追うタイミングを逃してしまっている。完全にボランチの死角に入り込んでおり、追えるのは藤春だけという状態だ。CBも潰しにいく必要性を感じられていない。

内側に走り込みながら、右足側にボールを要求する。サイドバック藤春は完全に反応が遅れてしまっており、CBもしっかりとスペースを閉じることが出来ていない。最も重要なポイントになったのは、このボールの受け方だった。左足側に要求して同じようにカイオへのパスを狙った場合、読まれて引っかかってしまった可能性もある。



そのままダイレクトで、カイオの走る裏のスペースへ。視野を広く保つためにゴールの方を向くのではなく、後ろを向いた状態でボールを受けにいくことに成功したこともポイントだ。背後に走り込むカイオのスペースが空いていることを、動きの中で確認していた。


カイオのクロスも、エリア内のハーフスペースから。守備も全く追いついておらず、クロスを上げた時点でゴールを期待出来る状況であったことが解る。勿論決めたシンデレラボーイ、鈴木優磨の勝負強さと空中戦も素晴らしい。しかしそれ以上に、鹿島はチャンスメイクの時点で守備を完全に崩していた。

 


是非動画でも確認して欲しいが、金崎にボールが入った瞬間にガンバの守備は完全に硬直してしまっている。最も危険なスペースに、相手のエースが入り込んでしまったということで生まれる躊躇もあるだろう。


しかし、最も重要となるのは視界だ。ハーフスペースにボールが入ったことで、サイドでの守備をこなさなければならない宇佐美の視界は強制的に内側へと動かされた。それによって宇佐美はカイオを完全に視野に収められない状態になってしまい、同時に守備陣全体が見るべきポイントをダイレクトパスによって動かされてしまった。速い展開によって、
CBが中央に入り込んだ鈴木を捕まえきれなかった部分があったのかもしれない。


 ハーフスペースへの侵入は、外でプレーする選手の目線を内側に向け、内側でプレーする選手の目線を外側に動かす。そして、ゾーンの間でプレーすることによって相手を惑わすことも可能になる。


 ヨーロッパの舞台で鍛えられた金崎夢生は、よりプレーエリアの広い選手へと生まれ変わった。また、危険なスペースを徹底的に狙っていく強引さは、南米の選手を思い起こさせる。ウルグアイ代表のルイス・スアレスの様な印象を持つボール運びは、アタッカーを育成することが多いポルトガルによって育まれた部分もあるのだろう。カイオと金崎の
2人は、今季の鹿島アントラーズの前線を牽引する柱となりそうだ。ついに始まった今季のJリーグ、金崎のハーフスペースの活用に注目してみると、またひとつおもしろくなるかもしれない。

 

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About yuukikouhei

yuukikouhei
結城康平: DEAR Magazine 編集部で「KNOW」カテゴリ中心に編集、企画担当。やりたい事だけは沢山あるので、Dear Magazineと共に色々なことに挑戦していきたい。ジャンル問わずなんでも書く系。サッカー批評、Qolyなどに寄稿経験有り。今一番欲しいものは、新しいノートパソコンと可愛い小動物を飼える環境。好きなアーティストはエジンバラ出身のBlue Rose Code。

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