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【Jリーグアジア人選手解説】ベトナムの「英雄」「メッシ」「ピルロ」

今シーズン、Jリーグに「ベトナムのメッシ」ことグエン・コン・フォンと「ベトナムのピルロ」ことグエン・トゥアン・アインのふたりが参戦した。彼らはベトナムの黄金世代と言われるU23ベトナム代表の中心選手として、ベトナム国内でアイドル並みの人気を得ている。両者の移籍は、ベトナム代表のマーケティングを担当している電通が旗振り役となり実現したのだそうだが、実際に実力はどのようなものなのだろうか。

ビジネス優先の移籍というと思い出されるのが、アジア人初のセリエAプレーヤーとして1994年にイタリア・セリエAのジェノアCFCへ1年間の期限付き移籍した三浦知良である。当時は戦力として評価されたわけではなくジャパンマネー狙いの移籍ではないかと、現地の報道で揶揄されていたのも事実だ。

実際に、その前評判の低さを覆すことは叶わず、三浦はリーグ戦21試合1得点という残念な結果に終わってしまった。日本人が戦力としても計算できる存在だと証明されるには、1998年のセリエAペルージャで中田英寿が成功するまで待たなければならなかった。

今回は、ベトナムのアイドル選手ふたりに加えて、Jリーグ最初のベトナム人選手レ・コン・ビンのプレーを分析し、ベトナムサッカー界の中田英寿となることができるか、その未来について探りたいと思う。

 

「ベトナムの英雄」

 

レ・コン・ビン / 元北海道コンサドーレ札幌

 現時点で3人のなかで最も能力が高いのは2013年にコンサドーレ札幌に所属した「ベトナムの英雄」レ・コン・ビンである。スピードがありクロスに合わせるのが得意なイングランド系のシャドーストライカーだ。キック技術に優れており、札幌ではプレースキッカーも任されていた。ミドルシュートにも定評がある。

 札幌では9試合2ゴールというパッとしない成績に終わってしまったが、札幌の財前恵一監督がレ・コン・ビンを不向きな右サイドハーフに起用したことが大きな要因だ。クロスをフィニッシュに持ち込むことに長けているレ・コン・ビンにクロスを上げさせたのでは本末転倒である。レ・コン・ビンは、能力的には十分にJ2で通用するレベルの選手ではあったが、本来のポジションで使ってもらえなかったこともあり、功績を上げることなく帰国。現在は「ベトナムのチェルシー」と呼ばれる金満クラブ、ベカメックス・ビンズオンでプレーしている。

 このビンズオンはACLにベトナム王者として参戦。3月1日にFC東京と対戦した。レ・コン・ビンは後半22分から左サイドハーフとして出場。しかし、チャンスに絡むどころか、ボールにほとんど触れず、低調なパフォーマンスに終始してしまった。

 現在レ・コン・ビンは、ベトナム1部リーグ2年連続MVPのFWグエン・アイン・ドゥックとのポジション争いに苦戦を強いられているらしい。夏にオファーを出せば、再来日の可能性はありそうだ。

 

「ベトナムのメッシ」

 

グエン・コン・フォン / 水戸ホーリーホック 背番号: 16

 反対に3人のなかで最も能力面で劣るのは、ベトナム黄金世代の得点源として絶大な人気を誇り、「ベトナムのメッシ」と称されているFWグエン・コン・フォンである。J2水戸ホーリーホックへのレンタル移籍が決まったグエン・コン・フォンだが、昨シーズンはベトナム1部リーグのホアン・アイン・ザライFCでエースストライカーとしての役割を果たすことができず、23試合6得点という凡庸な結果に終わってしまった。チームも14チーム中13位に沈んだ。

 イングランド・プレミアリーグの名門アーセナルとホアン・アイン・ザライFCが共同で設立した下部組織ホアン・アイン・ザライ・アーセナルJMGアカデミー出身でユース時代から将来を嘱望されていた選手ということもあり、実績よりも人気が先行している面も否定できない。

 黄金世代と呼ばれて期待度の高かったU23ベトナム代表だが、昨年末にJFL選抜と親善試合を2試合おこない0-4,0-1と完敗している。グエン・コン・フォンにしてもJ3でも通用するかあやしい水準のプレーばかりだった。

 メッシに例えられるだけあって、一瞬のダッシュ力に優れている。ただしメッシのようなカットインは苦手としており、むしろ縦へ突破するプレーの方が得意だ。技術的にはJ3の平均を下回っている。足元にボールを欲しがる傾向があり、オフ・ザ・ボールの動きの質も低い。右足しか使えないという弱点もあり、DFに右足を重点的にケアされると、何もできなくなってしまうようだ。

 グエン・コン・フォンがJ2で通用する選手になるためには、早急に左足を使ったプレーをマスターする必要がある。右足だけではないというところを見せないと、ベンチ入りすらおぼつかないだろう。

 

 

「ベトナムのピルロ」

 

グエン・トゥアン・アイン / 横浜FC 背番号: 32

 そんなグエン・コン・フォンに比べて期待値が高いのが、2014年のベトナム1部リーグ最優秀若手選手であるグエン・トゥアン・アインだ。「ベトナムのピルロ」以外に「ベトナムのロナウジーニョ」とも呼ばれているが、それはグエン・トゥアン・アインがGKを除いた全ポジションでプレー可能なユーティリティ・プレーヤーなためである。

 展開力と組み立て能力に優れたパサーであると同時に、ダブルタッチなどの個人技で局面を打開するドリブラーでもあるのだ。ゲームメーカーとしての資質ならばJ2でもトップクラス。アーセナルの練習にも参加し、名将アーセン・ヴェンゲル監督からも高評価を受けたそうだ。現時点では選手として全盛期にあるレ・コン・ビンに劣っているが、将来的には彼をしのぎ、東南アジアを代表するスター選手となることだろう。

 課題はグエン・コン・フォンと同様に、オフ・ザ・ボールの動きとお世辞にも強いとはいえないフィジカル。身長176センチ65キロと痩身でフィジカルコンタクトに脆い。マークを外す動きを苦手としていることから、DFにタイトにマークされると試合から消されてしまいやすいようだ。少なくとも、もう4キロは増量しないとJ2でプレーするのは難しいだろう。契約期間は1年しかないが、日本での成功を願うならば、もう1年は猶予が欲しいところである。
 

 今回はベトナム人3選手のプレーを分析したわけだが、他にもベトナムの黄金世代には「ベトナムのベイル」ことグエン・フォン・ホン・ズイなど、若手有望株が目白押しなのだそうだ。リオ五輪予選を兼ねたAFC U23選手権では、3戦全敗でグループリーグ敗退したU23ベトナム代表だが、人材は育っている。将来的には日本のライバルとして台頭してくるかもしれない。

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