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第2回:悪夢とこども  / 【世界一周】フットボール × 平和の旅

Photo by Takuya Wada

カンボジアという国にいってふと思ったことがあります。それはこどもが本当に多いこと。大人も比較的若いかたがほとんで、少し不自然なくらい。そんな違和感の中でも純朴で透き通るような瞳をもつこどもたちに渡すサッカーボールは、いつもより重く感じました。

おとながいない

 
 みなさん「ポル・ポトの悪夢」をご存知でしょうか?向井理さん主演の『僕たちは世界を変えることができない。』で取り上げられ、日本でも近年話題になりました。原始共産主義のポル・ポトが政権を握ったことで、あらゆる大人、知識人が虐殺され、1975年から僅か4年間で、カンボジア国民の手によって約300万人のカンボジア国民が殺され、800万足らずのこの国の人口は3分の1になりました。この身の毛もよだつような出来事の結果、洗脳された無垢な子供だけが生き残り、カンボジアの平均年齢は現在24.5歳となっています。

Photo by Natsumi Kura

 実際に虐殺が行われていたトゥールスレン虐殺博物館では、処刑が行われていたベッドや、独房、処刑器具、処刑された方々の顔写真などが展示してあります。僕は長崎市出身なのでよく原爆資料館を訪れていたのですが、その時と同じような雰囲気を感じました。言葉も出ない、なにも考えることができない。ただ、ただ、こんな目を覆いたくなる出来事がはるか昔、ではなく約40年前に起きていた。ということにショックを覚えました。僕はこの地を訪れるまでそんなことも知らず、ここに住んでいる方々の生活に何の関わりもない遠い国からいきなりやってきて、

 
「僕たちの国の過去を知ってほしい!」

 
 そんな自分がすごくおごがましいような気がしてしまいました。本当の恐怖なんて、実際に体験した方々でないと、伝えることは難しい。

 でも、だからこそ、過去の振り返りたくないような出来事から僕らは学び、それを少しでも感じて伝えていかなければ。そう強く思います。僕らにできることなんて取るに足らない小さなことなのかもしれません。だけどそれでも小さな一歩を踏み出して、考え、行動に移すべきだと思うのです。

photo by  Takuya Wada
photo by Takuya Wada

 
アンコールワット遺跡群のあるシェムリアップへ行った時のこと。出会った60代の男性と一緒に遺跡を周りながら、こんなことを言っていました。

「モノを取ってもここの人たちは悪いと思わない。なぜって、それが悪いことだと教える大人が自体がいないんだよ」。

 その言葉を聞いて日本のことを考えてしまいました。「それを教えてくれる大人はいるはずなのに」。「そして僕たち大人はどうだろう?」

渡す?渡さない?

  
 僕らは世界遺産アンコールワットでもサッカーボールを持っていたのでやはり「NAKATA!」と声をかけられました。アンコールワットでドリブルをした日本人はなかなかいないんじゃないでしょうか(笑)。

 そしてここでもやはり物乞いをしたり、物を売ってくる子どもがたくさんいます。物を売って日々を生き延びるために、日本語を覚え、英語を覚え、物を売る技術を身につけ、こどもであってもこうして働かなければならないんです。

 そんな彼らがボールを指差して「give me!」と言ってくるたびに、とても迷いました。彼らにあげて彼らがサッカーを楽しんでくれるならいい。でもこのあげたボールを、このあとどこかに売ってしまうんじゃないだろうか?そう考えてしまい、あげることができませんでした。
 ひもじくて。勉強がしたくて。色々な理由で、色々な場所でお金をくれないかとこどもたちに言われます。僕はお金を渡すべきか、渡さないべきか、ずっと考え込んでしまいます。

Photo by Takuya Wada

 
 そんな環境の中でもサッカーをしているというこどもたちに出会い、一緒にサッカーをすることができました。去年にカンボジアで行われたワールドカップ2次予選、カンボジア対日本も観に行くことができたそうで、「日本は強かったけどぜんぜん点とれないし面白くなかった!」とのこと。

「なつ、サッカーうまいね!サッカー選手になれるんじゃない?」そう褒めてくれた子が大人になるころ、カンボジアはさらに活気溢れている。そのカンボジアで、彼らのこどもたちが、みんなでサッカーなんてしている。そんなことになれば嬉しいな、そう思いました。

 

Edited by DEAR Magazine

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About natsumi kura

natsumi kura
倉夏海:福岡に住む20歳の大学生。18歳までは地元、長崎県で選手としてプレー。12歳の時に全日本少年サッカー大会出場。16歳で長崎県国体選抜に選出。高校サッカー部引退後、出身クラブでコーチとして指導後、19歳でサッカーC級ライセンス取得。2月1日から世界一周中。

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